パンチのある音とはどんな音?

puncher

日常生活で使う形容詞の中には様々なバリエーションがあります。

なかでも「サムい」ギャグとか「アツい」声援などの本来それ自体で異なる意味を持つ言葉でもニュアンスがしっかり伝わるものがあって面白くて、こういうのを共感覚的比喩と分類したりするそうです。

そんな共感覚的比喩の中で個人的に気になるのは「パンチのある」という言い回し。

例えばサッカーの実況で「パンチのあるシュート」みたいな表現を聞いたことはありませんか?

シュートはキックなのに何で「パンチ」なんだと冷静に考えてみると不思議なのですが、案外言わんとしてるニュアンスは何となく汲み取れます。(まあ自分でそんな表現は使うことは無いと思うけど)

他にも「パンチのある奴だ」とか「パンチのある味」だとか多種多様なジャンルに適用されてますよね。

音楽製作においても「パンチのある音」というのはよく使われていて、元々パンチが英単語なので当然かもしれませんが、英語圏でもPunchyという形容詞が同じような意味で使われているのを見かけます。

でも散々使っている「パンチのある音」って具体的にどういう事を形容してるのかを考えてみると、意外とすんなりと説明ができない気がします。

そこでまず、「パンチのある」という言い回しの「パンチ」とは、どんな感じのパンチなんだ?って考えてみました。

浮かび上がったのはボクシンググローブでの顔面へのパンチ。

空手みたいな素手でのパンチを想像すると「パンチのある」という表現はしっくりこない。

顔面へのパンチという前提条件で両者の違いを考えてみると、空手など素手のパンチは骨にまで届くような固い感じで、ボクシンググローブのパンチは表面にバチーンと痛快な感じの印象を抱きます。

前者はちょっと血なまぐさい暴力的な感じですが、後者はスポーツ的な爽やかさを感じます。

でもグローブであれば何でも良いわけでなくて、総合格闘技とかの薄いグローブとか、おもちゃの柔らかめのグローブでは「パンチのある」感が出ない。

つまり、固い感じは無いけど柔らかすぎることもなく、しっかりとインパクトを与えることが出来て、なおかつボクシンググローブの表面が皮膚を叩く時のバチーンという風な音を彷彿とさせるヌケの良い爽快な感じを持っている音が「パンチのある音」なのではないでしょうか!?

音に置き換えると、中高音の硬さは感じないけど低音域のボヤッとした感じもなく、しっかりとダイナミクスを感じることがあって、ボクシンググローブの表面が皮膚を叩く時のバチーンという弾けたヌケの良い爽快な感じを持っている音。というのが「パンチのある音」なのではないか!?

と書いていたものの、ヌケの良いとか爽快な感じ、というのも具体性に欠けた表現です。

じゃあもっと具体的にどういう音なのか無理やり考えると、150Hz以下の低音域(素材や個人の感覚による)が強すぎず変なピークが出ていなくて、中〜高音域の500hz-2000khzくらい(素材や個人の感覚による)にありそうな硬い感じのする部分を辺りを抑えていて、高音域の音がちゃんと出ているような音が「パンチのある音」と呼ばれてるのではなかろうか、と。(かなり無理があるな…)

これって、いわゆる「ドンシャリ」と呼ばれるような音な気がしますが、どうなんだろう笑

まあ結局捉え方は人それぞれなので音に関する描写は一概には出来ませんね。。

ただ、元々英語圏で使われていたPunchyっていうのが1900年の前半に生まれたらしいという事と、ボクシンググローブ着用を義務付けたクインズベリー・ルールが1865年ってことを考えると、「パンチのある」がボクシンググローブのパンチっていうのは多分合ってるんじゃないですかねー

はい。てことで、こんな感じで「パンチのある音」についての戯言はオシマイです。

今思い返してみたら、自分で「パンチのある音」っていう言い回しを使ったことが無かったかも。

次回は「シルキーな音」についてお送りします!

ウソです。

(終)