LUFS/LKFS…ラウドネスメーターについて復習して理解を深めよう

RMS値の記事でラウドネスメーターの方がいいよね〜なんて書きましたが、思い返すとワタクシ…ラウドネスメーターなんて全然使ってませんでした(爆)

だって基本マスタリングの人ではないし、放送系の仕事も縁が無いのでラウドネスメーターなんか使わないのですよね。ミックスの時にラウドネスメーターやRMS値なんて見ても意味が無いと思うし。

だけどLUFSとかLKFSとか名前を挙げといて、投げっぱなしじゃあアカンなぁと思ったので、ラウドネスメーターに関する事柄を復習してみたいと思います!

※ワタクシ自身が音楽畑の人間なので、音楽制作方面から見たラウドネスメーターの復習となります。

目次
  1. RMSメーターの問題点
  2. ラウドネスメーターの登場
  3. ラウドネスメーターのおおまかな仕組み
  4. ラウドネスメーターで使われる単位
  5. ラウドネスメーターで表示されるもの色々
  6. フリーのラウドネスメーター
  7. 音楽制作におけるラウドネスメーターの使い方を模索
RMSメーターの問題点

まず、従来のRMSメーターは音圧を測る上で何が問題なのかをおさらいしたいと思います。

従来から「音圧」を測る尺度として用いられているRMS値の問題点は人間の聴覚特性を考慮していない点と言われています。

例えば65Hz3000Hzのサイン波を-18dBFS RMSで揃えて聴き比べるとどちらが大きいな音に感じるでしょうか?

3000Hz (念の為、音量を下げてから再生して下さい) :

65Hz :

等ラウドネス曲線

多分3000HZの方が大きく…というか煩く聴こえると思います。

これは人間の聴覚の感度が周波数によって変化するためですが、RMS値はどちらも同じく-18dBFS RMSになるのですね。

つまりRMSメーター的には同じ音圧とみなされる。

てことは音楽の音圧を測るときにも周波数のバランスによってバラつきが出てしまうことは必至。

なのでRMS値が同じだからといって2つのソースの音圧が聴覚上同じになるとは限らないのですね。

ラウドネスメーターの登場

そんなこともあって登場するのがラウドネスメーターですが、基本的は放送業界向けに開発されたものです。

最初に土台となるアルゴリズムを発表したITU-R「国際電気通信連合」だし、それを元に規格化したEBU R128EBU「欧州放送連盟」ATSC A/85ATSC「高度テレビジョン・システムズ委員会」という具合で、放送業界が率先して開発してます。

ITU=国際電気通信連合のロゴ。ITU-Rはその中の無線通信に関する標準化や勧告を行う機関とのこと。(wikipedia情報)
EBU=欧州放送連合が定めた放送用音声のガイドラインEBU R128のロゴ。

音楽の場合POPSやROCKなどは最初から最後までアレンジ的に音量がほとんど変わらない事も多いですが、映画など映像の場合は台詞の場面や爆発の場面や様々なシーンでの音量差がとても激しかったりしますよね。

テレビやラジオの場合は様々なCMトーク楽曲まで幅広く取り扱わないといけないですし。

そういった放送される音声をRMS値とかVUメーターで管理するのは非常に難しい!ということで、開発されたのがラウドネスメーターだと思われます。

なので最初から完全に音楽用として開発されたわけではなく、むしろ音楽にも「転用」出来るという風に考えたほうがよいかもしれません。

ラウドネスメーターのおおまかな仕組み

そんなラウドネスメーターの仕組みはザックリと表すと以下の図のような感じになります。

対象の音源に人間の聴覚特性に近いフィルターを最初にかけて計算して瞬間的/短期的なラウドネス値を出し、その後に小さな音のデータはパスするようなゲートを付けて全体のラウドネス値を出す…という感じ。

実際にはマルチチャンネルを合算するセクションとかがあるのですが、仕組みの核は「プリフィルター」と「ゲート」だと思います。

おそらくこのフィルター(K-Weighting)とゲートの具合(2つのセクションからなる)の研究が大変だったのではないかと想像したり。

ラウドネスメーターで使われる単位

さて、まず最初にラウドネスメーターで使われる単位から見て行きましょう。

LKFS/LUFS

ラウドネスメーター表示されるラウドネス値に使われる単位はLKFSLUFSです。

略さずに言うとLoudness K-Weighted Full Scale(LKFS)Loudness Unit Full Scale(LUFS)

LKFSはITU-RやATSCの規格を採用しているメーターで使われ、LUFSはEBUの規格を採用しているメーターで使われます。ちょっと紛らわしいですが、この2つは名称こそ違えど同一のものです。

LKFS/LUFSは皆さんお馴染みのdBFSと同じようにDigital Full Scaleに基づく絶対値です。

LKFS/LUFSの1単位は1dBと同一で、例えばラウドネスが-15LKFS/LUFSのチャンネルを1dB下げると、-16LKFS/LUFSになります。また、1kHzのサイン波のピーク値とLKFS/LUFSの値は一致します。(例:1kHzサイン波のピークが-4dBFSである時ラウドネス値は-4 LKFS/LUFS)

LU

LKFS/LUFSが絶対値である一方、LUという単位は相対値になります。ちなみにLUを略さずに書くとLoudnes Unitです。

具体的な使用例だと-24LKFS/LUFSを目標とした時に対象の音源が-20LKFS/LUFSだとすると、その差は4LUになります。

LUも1単位が1dBと同一なので、先の例の場合4dB下げれば目標の-24LKFS/LUFSになりますね。

dBTP

ラウドネスメーターにはトゥルーピークを表示できる機能が備わっていて、そこで使われる単位がdBTPになります。

サンプルピークメーターで0dBFS以内と表示されていてもDA変換する際のリサンプリングなどによって0dBFSを超えてハードクリップすることがあるのですが、そこでの本当のピークがトゥルーピーク/インターサンプルピークと呼ばれています。

例えば最大値が-1dBTPという表示の場合はトゥルーピークの最大値が-1dBFSになっているという状態となります。

ラウドネスメーターで表示されるもの色々

では次にラウドネスメーターで表示される色々なセクションを見て行きましょう。結構ゴチャゴチャしててとっつきにくいですが、ラウドネスメーターを使えるように覚えていきましょう(笑)

ここでは一般的なラウドネスメーターに表示されているものを見ていきます。

ちなみにEBU R128に基づき定められたEBU MODEというラウドネスメーターの仕様があるのですが、結構守らなければいけないことが多いためか?(カスタイマイズ性がなくなるから?)正確に準拠して”EBU MODE”と表記しているメーターが多くない気がします。

そういう場合はITU BS1770に準じたとか、EBU R128に準じた等と書かれたりします。

ま、基本的なセクションは同じだと思うので、とりあえずいってみよう。

Scale / Range

まず、ラウドネスメーターが表示する範囲を定めるセクションから。

特に決まった名称はありませんがMeter RangeとかScale等と書かれていて、EBU+9EBU+18と選択するものや任意で範囲を設定するものがあります。

数字でラウドネス値を表示するだけのセクションではあまり関係ありませんが、バーグラフメーターやヒストリーグラフで表示するラウドネス値の範囲をこのセクションで決めます。

絶対的数値のLUFS/LKFSで表すモードと相対的な数値のLUで表すモードの2つが選べたりするものもあり、それによって表示される数値も変わります。

EBU+9を選択した場合は-41LUFS/LKFS 〜 -14LUFS/LKFS(絶対値) / -18LU〜+9LU(相対値)となり、EBU+18の場合は−59LUFS/LKFS 〜 -5LUFS/LKFS(絶対値)/ -36LU 〜 +18LU(相対値)となります。

近年の音楽は音圧(音量)を詰め込んでいて-10LUFS/LKFS以上になっていることが多いので必然的にEBU+18を選択することになると思います。それか任意で範囲を決めるタイプのメーターを使うとかですね。

表示を相対値にした場合にはターゲットレベル(=目標とする値)0LUと定めて、そこからの差異を表すことになります。例えばEBU R128規格だとターゲットレベルが-23LUFSと定められているので、-23LUFS=0LUとします。

EBU MODEではデフォルト設定がEBU+9で、ターゲットレベルはEBU R128の-23LUFSになります。

Momentary Loudness

その名の通り瞬間的なラウドネス値を表すMomentary400ms単位でのラウドネス値とのことで、ある意味K-WeightingのプリフィルターをかけたRMS値とかVUメーターに近いものです。

なので、従来のRMSメーターの使い方のままに適用できるのがMomentaryだと言えます。メーターによっては単に「M」と表示されたりします。ゲートは適用されません。

EBU MODE準拠のラウドネスメーターではMomentaryの最大値の表示が求められています。

Short Term Loudness

3秒単位のラウドネス値を表すのがShort Termです。Momentaryより長い単位を計測しているので、パット見その時のラウドネス値を計測するのに適していますね。

メーターによっては単に「S」と表示されたりします。こちらもゲートは適用されません。

Integrated Loudness / Program Loudness /Long Term

全体のラウドネス値を表すのがIntegrated Loudness又はProgram Loudnessで、Long Termと表されているものもあります。メーター上で単に「I」と略されたりします。

ラウドネスメーターに流した音源全体のラウドネス値で、通常ラウドネスメーターに付いているリセットボタンでリセットするまではデータが蓄積されます。「スタート」「一時停止」「再開」ボタンが付いている場合はそれを使って再生している時のデータが使われます。

このセクションではゲートによって小さい音が除外されるなど最適化して、プログラム全体のラウドネス値を表示します。

ゲートは具体的には-70LUFS/LKFSの音が除外されるのと、相対的に10LU以上の開きがある時のデータが除外されるみたいです。

Loudness Range

プログラム全体のラウドネスのがどのくらいあるかを表示するLoudness Range。略してLRAと表示されたりします。

プログラム全体で大きな音のセクション小さな音のセクションにどのくらい開きがあるのかを確認することが出来ます。

セクションごとの「音量差」という意味合いが強いので、ピークと実効値の差(クレストファクター)を表す楽曲の持つダイナミックレンジの有無を測る尺度としては機能しません

なのでダイナミックレンジを潰したいわゆる音圧マシマシな音源と、そうでない音源でもLRAの数値がたいして変わらないことも多いです。

このLRAの数値は主に放送業界用のセクションだと思われ、音楽用途だとアレンジ的に抑揚が大きいクラシックな音楽(オーケストラとか)等で無い限り参照してもあまり意味がなさそう。

History Graph

youlean loudness meterのヒストリーグラフ。青い部分と赤い部分の境目が指定しているターゲットレベル。

ラウドネスメーターにはMomentary、Short、Integratedの各ラウドネス値などが時系列にグラフで表示される機能が付いていることがあります。

ヒストリーグラフ等と表記されたりしますが、決まった名称は無いのかな?

線グラフのように表示され、プログラム全体のラウドネスの動きが時系列にそって後から確認することが出来ますね。

EBU MODE的には必須ではなさそう。

True Peak Measurement

トゥルーピーク/インターサンプルピークを表示する機能。使われる単位はdBTP。EBU MODEでは必須機能みたいで、デフォルト設定では最大値が-1dBTPと定められています。

DA変換時やリサンプリングの際にハードクリップが発生するのを未然に防ぐため(気づくため)、音源のトゥルーピークを表示できる機能がラウドネスメーターには備わっていまるのですね。

トゥルーピーク/インターサンプルピークの最大値を定めて超えた時にクリップマークが表示されたり。

ちなみにトゥルーピーク/インターサンプルピークの問題解決方法として、その分ヘッドルーム(リミッターのCeiling)を多く取るとか、トゥルーピークリミッターを使用する等があります。

この機能は割と音楽制作向けかも。

フリーのラウドネスメーター

ざっとラウドネスメーターの各セクションを紹介しましたが、後は実際に使ってみて各自使い方を覚えていって下さい!ってことで、フリー(無料)で手に入れることが出来るラウドネスメーターを紹介します。最近はDAWに標準で付属していることも多いみたいですけどね。

今回はオススメのプラグインを2つとスタンドアロン型のソフトを1つを紹介。

Youlean Loudness Meter

こちらは割と最近リリースされたフリーのラウドネスメーターで、非常に見やすい。

一通りの機能も備わっていますしオススメ。ただ、まだaaxバージョンが無い。。

http://youlean.co/youlean-loudness-meter/

MLoudnessAnalyzer

Melda Productionのラウドネスメーターも無料で、こちらは相対的な値を使ってますね。目標とするラウドネス値が決まっている場合は見やすいです。

Meldaの無料バンドルのインストーラーから選択してダウンロードする方法。

https://www.meldaproduction.com/MLoudnessAnalyzer

Orban Loudness Meter

そしてDAWが無くても使えるスタンドアロン型の無料ソフトはコチラ、放送系の機器を作る会社のOrbanが無料で配布しているラウドネスメーター。

メーターのスケールをEBU+9とEBU+18と選択できるもののバーグラフメーターの表示はなぜか+9のままなので、音楽制作用途にはちょっと適していませんが、オフラインのアナライズが出来るので便利です。

オフラインのアナライズはwavだけでなくmp3とかでも読み込めるのが良いですね。

http://www.orban.com/orban/meter/

音楽制作におけるラウドネスメーターの使い方を模索

まだまだ歴史が浅いためコレといった使い方?が音楽制作では確立されてない(もしくは共有されていない)と思われるラウドネスメーターですが、どのように使っていくかを考えてみたいとおもいます。

まず、もし皆さんが現在RMSメーターを使っているという場合なら、ラウドネスメーターのMomentaryShort-Termをそのまま代わりに使用すればオーケーです。

先にも書いたようにラウドネスメーターのMomentaryShort-termはゲートが適用されてなく、M値は特にK-weightingフィルターのかかったRMS値のようなものなので、RMSメーターの上位互換的に代替出来る気がします。

個人的にRMSメーターをあまり使わないので具体的にどう使うかは書けませんが、皆さんの方が詳しいでしょう笑

より実戦的に今すぐにでも活用できるのは、近年普及しているラウドネスノーマライゼーション対策です。

特にYoutubeはユーザーに選択肢を与えずにラウドネスノーマライゼーションが適用されるので、Youtubeにダイナミックレンジを潰した音圧マシマシ音源をアップロードする意味が薄れています。

したがってラウドネスメーターを使い、それを念頭に置いたマスタリングを施すのも手です。

公式なアルゴリズムは公表されていませんが、一説によると-13LUFS/LKFS付近をターゲットレベルにノーマライズされているという話ですので、ラウドネスメーターを使って予めIntegratedラウドネス値を-13LUFS/LKFSに調整しておけばノーマライズ後にどうなるかを把握可能

↓検証してみました。

Youtubeのラウドネスノーマライゼーションを検証してみた。

2017.05.16

他のサービスでも例えばSpotifyApple Musicでもターゲットレベルが非公式ながら推測されているので、それに合わせばノーマライズ後にどうなるのかチェックが出来ます。

ただ、SpotifyやApple Musicはユーザー側でノーマライゼーションのON/OFFが可能なので、最終的に提出するファイルを指定のターゲット値にする必要は無いと思います。

結局のところ自分が心地よい音量で聴いた時に良い音にすればノーマライズされようがされまいが問題ないと思うので、純粋に音楽制作だけ考えた場合はラウドネスメーターの出番は無いのではないかな〜というのが個人的な考えです。

だって人間の聴覚特性に近づけたメーターといっても僕らは人間なのだから自分の耳で聴けばいいじゃんって思うんですよね。

むしろIntergrated Loudnessなどは「音楽制作」という面では不適当な場合もあるのではないかとも。

例えばAメロはおとなしめサビが盛り上がるPOPS的アレンジの楽曲と、最初から最後までパワー全開のROCKな楽曲のIntegratedラウドネス値がどちらも-10LUFS/LKFSだった場合、前者のサビの部分の方が音圧が高くなると思うんですよね。

要はアレンジ的に抑揚がある楽曲の方が、Integrated値を揃えた時に音圧面で有利になるのではないか

でもそれって変じゃないですか?ライブだったらパワー全開のROCKの方が全体を通して音圧が高くなるだろうし、抑揚が無いアレンジってラウドなジャンルだったら別にオカシイことでも無いと思うのです。

(念の為に書きますが、これはマキシマイザーとかでダイナミックレンジを潰して音圧を上げているという話ではなくアレンジの話なので、抑揚があるアレンジが有利になれば音圧戦争が終わる!っていうことでは無いです。)

この場合は一番音圧の高いセクションのMomentaryShort-Termのラウドネス値を揃えたほうが良い気がします。

そういうわけで、大量の音源を一括で管理しないといけない場面とかアプリケーションやソフトで一括で管理する場合であればIntegratedの値は便利ですが、単純に一つの作品や楽曲を作る上ではIntegrated値はあまり役立たないのではないのか…と思ったのですがどうなんでしょう

まあこれはワタクシ個人の考えだし、まだまだ音楽制作方面ではラウドネスメーターの使い方は確立されてないと思うので、皆さん各自考えて使っていきましょう!(良い使い方があったら教えて下さい。)

何か間違い等ありましたらメールTwitterとかで教えて下さいね。知識を深めていきましょう!

(終)

参考にしたページ(思い出せる限り)