とっても良い感じのディレイValhalla Delayの紹介

Valhalla DSPという安価(一律50ドル)かつ高品質な空間系のエフェクトプラグインを作っているデベロッパーが今年リリースしたValhalla Delayがとてもしっくりきて気に入ってます。

オフィシャル:https://valhalladsp.com/shop/delay/valhalladelay/

 

新興メーカーだし日本では代理店も無いので英語圏ほど浸透してなさそうなメーカーですよね。

主宰のSeanさんはかなり空間系エフェクトにとり憑かれた感のある自称アルゴリズミックリバーブウィザードという研究熱心な方のようで、なんか非常に信頼できます。

このValhalla Delayは直感的になんとなく使っても良い感じのディレイが作れるのですが、マニュアルを読んで細かいところも理解した方が良いだろうなっと思ったので自分の理解を深めるために紹介を兼ねてまとめてみます。

Valhalla Delayとは

Valhalla Delayは過去の様々なディレイやエコーユニットの名機を元にValhalla DSP的に解釈し昇華したプラグインで、テープエコーやBBD、古いデジタルディレイやコーラス、フランジャー、ピッチシフトの出来るものまで揃っています。

曰く3年の歳月をかけて開発したとのこと。

過去の名機の再現をするだけでなく、新たな解釈で拡張したモードを加えたり自身の培ってきたリバーブ技術からディフュージョン機能を追加したりしてます。

なんでも出来る系のディレイではなくて、基本はアナログ機器が持つ音楽的な「アーティファクト」を大事にしたディレイプラグインだと思います。

それは各モードによって変わるノイズも音質に寄与しているという理由で、あえてノイズが完全に排除できない仕様になっていることからも明らかですね。

ハードウェアが持つ美味しい挙動をまとめて現代的に表現したディレイプラグイン…Valhalla Delayを一言でまとめるとそんな感じです。

個人的には音の良さと使いやすさのバランスがドンピシャだったので、非常に気に入ってます。

基本構成

Valhalla Delayは7つのモード(今後更に追加されるみたい)と5つのディレイスタイルを選択するのが基本で、それにERAというオプションが付いています。

いくつかのパラメーターはモードとスタイルによって変わり、ERA機能がどのように作用するかも各モードによって変わります。

各モードやスタイルを見る前に共通するいくつかのパラメーターを見てみましょう。

まずはMIXノブ。

言うまでもなくDRY/MIXのコントロールをするためのノブです。MIXの文字をクリックすると値が「ロック」されプリセットを切り替えてもMIXの値が固定されます。

その下にあるのはSTYLEノブで、ディレイのスタイルを切り替えます。(詳細は後述)

FEEDBACKはディレイのフィードバック量を設定、0%〜200%まで設定可能。各設定にもよるが100%辺りから自己発振しはじめて200%までいくと何も入力しなくてもすぐに自己発振します。

WIDTHはディレイのLRのステレオ幅の調整。100%のときはL側からインプットされたディレイはLに出力されるけど、-100%にすれば逆にR側に出す事ができる。

0%の場合はLとRの出力が混ぜ合わさるのでいくつかのモードでは強いフランジャー的な効果が作れる。

各モード紹介

モードによって色が変わります。

ってことで各モードから見ていきましょう。

Tape

有名なRoland SpaceEchoのRE201とRE301を元に色々な回転速度等をモデリングしたヴィンテージ系のテープエコーモデル。

  • ワウ/フラッターの具合や全体の周波数特性はディレイタイムに関係してくる。これは実機に見られる挙動。
  • MODにあるWow/Flutterは文字通りテープにあるワウ/フラッターの具合をコントロールする部分。ヨレヨレのテープの質感みたいなのを求めたり出来るよう。
  • AGEはノイズの粗さや量をコントロール出来る。更にはテープを切り貼り(スプライシング)する事によるアーティファクトも出てくるようです。
  • ERAはテープエコーの種類を変えることが出来る。PastとPresentはよりダークな質感でショートディレイの時に高域で特徴のある自己発振が出てくるとのこと。Futureはより洗練された音。

HiFi

これまたテープ機器が元になっていますが、Tapeモードの古くて荒い質感とは違ってレコーディングスタジオにあるような「ハイファイ」なリールテープを応用して使うディレイを元にしています。

  • これもテープを元にしているため実機と同様にディレイタイムに応じて全体の周波数特性が変わる。
  • MODにあるRate/Depthはテープのワウ/フラッターからのモジュレーション具合をコントロール。Tapeモードと違いディレイタイムに関係しない。
  • AGEも同じくノイズの粗さや量をコントロール出来るけど、テープスプライングのアーティファクトは無し。ハイファイだから。
  • ERAはマニュアルに書いてないけど多分テープのモデル差とかで、周波数特性や非線形歪に違いが出てます。

BBD

バケットブリゲードデバイス(略してBBD)を使用したアナログディレイを元にしたモード。日本語だとバケツリレー素子を使った〜と紹介されてるやつ。

コンパンダーによるアーティファクトやノイズ、狭めの周波数特性なども再現。どちらかというとダークで汚い系のディレイ。

  • MODのRate/Depthで三角波のLFOをコントロールして僅かなビブラートやピッチの滲みをコントロール出来る。
  • AGEはBBDのノイズの量を決める。コンパンダーの動作方法により信号の強さによってノイズの具合は変化する模様。
  • ノイズの量はフィードバックの強さによって変化する(ver1.1.2以降)。フィードバックが100%付近になるまではノイズ抑えめ。
  • ERAはBBDモデルの切り替えでPastがより暗めの質感、Futuerそれに比べて少し明るめのキャラクターとのこと

Digital

「フローティングポイントコンバーター」というのを使用した80年代のディレイ機器を元にしたモード。スムーズなディレイにデジタル初期のちょっとした粗さが加わった質感。

  • MODのRate/Depthで三角波のLFOをコントロールして僅かなビブラートやピッチの滲みをコントロール出来る。
  • AGEはモデリングされたビット深度をコントロール。値を上げるほどにビット深度は低くなるのでデジタルの粗さが出る。50%で12bitに相当するとのこと。
  • ERAは周波数特性とサチュレーションのモデリングの切り替え

Ghorst

Valhalla DSPオリジナル。HiFiモードを基に周波数シフトとユニークなディフュージョンを加えたモード。

  • FREQ Shiftで全体の周波数のシフト具合をHz単位でコントール。
  • FREQ DetuneはLとRでの周波数のオフセット具合をコントロール
  • AGEはノイズの粗さや量のコントロール。おそらくHiFiと同じ。
  • ERAはディフュージョンのモデルの切り替え。Pastは他のモードと同じ、Presentは周波数によってディフュージョン具合が変化するようになる。Futuerは更にわかりやすく周波数による変化が大きい。幽霊っぽい声を演出するのに最適?とのこと

Pitch

ピッチシフトが加わったデジタルディレイ。

  • PITCH Shiftで全体のピッチシフト具合を半音単位でコントール。
  • PITCH DetuneはLとRをそれぞれcent単位で音程のズレ具合をコントロール。ボーカルとかに使うダブラーとかピッチを少しズラしたコーラスみたいなのに最適。
  • AGEはモデリングされたビット深度をコントロール。おそらくDigitalモードと一緒。
  • ERAはサチュレーションと周波数特性の種類の切り替え

RevPitch

Pitchモードのリバースバージョン。入力信号が逆再生されたものがディレイになる。

  • DELAYパラメーターは出力される音のサイズ(逆再生の範囲)をコントロール。
  • PITCH Shiftで全体のピッチシフト具合を半音単位でコントール。
  • PITCH DetuneはLとRをそれぞれcent単位で音程のズレ具合をコントロール。ボーカルとかに使うダブラーとかピッチを少しズラしたコーラスみたいなのに最適。
  • AGEはAGEはモデリングされたビット深度をコントロール。おそらくDigitalモードと一緒。
  • ERAはサチュレーションと周波数特性の種類の切り替え

各スタイル紹介

次は各スタイルの紹介です。

各モードが全体的なキャラクターの違いだとすると、各スタイルというのはディレイのさせかたのバリエーションといえます。

Single

LとRで全く同じディレイタイムやモジュレーションが適用されるスタイル。

  • ステレオイメージを保つためにLRそれぞれ独立してディレイは適用されているらしい。
  • SPREADノブはLRのディレイをズラすことが出来る。それにより立体的な音像が得られる。ここをいじると入力がモノラルでも出力がモノラルではなくなる。
  • SPREADノブに表示されるオフセット量(ミリ秒)はL側には足されて、R側からは引かれる。例:ディレイタイム300msでSpreadが5msの場合、Lは300+5=305ms、Rは300-5=295msのディレイタイムとなる。

Dual

LとRでそれぞれディレイタイムを設定できるスタイル。

  • LとRでフィードバックは独立しているので、フィードバックがクロスオーバーすることは無いとのこと。
  • モジュレーションもLとRで独立している。

Ratio

DELAYノブで設定するディレイタイムはL側の設定となり、そこからRatioノブで設定した値でR側のディレイタイムが決まるスタイル。

  • LとRのフィードバック経路はユニタリ行列を介してまとめられる。
  • RATIOを61.8%(黄金比?)にしてフィードバックを程よく上げていくと良い感じのとリバーブっぽいサウンドになる。

PingPong

ディレイが左右に跳ね返る、いわゆるピンポンディレイ

  • 入力信号のLとRはまとめてL側のディレイに送られ、フィードバックがR側に送られる、そしてそのフィードバックがL側に送られて、そのフィードバックが更にR側に…の繰り返しで、クラシックのピンポンディレイサウンドの出来上がり。
  • LとRのディレイタイムを個別に設定して異なるリズムに出来る。
  • 右から左へのピンポンディレイにしたい場合はWIDTHを-100%にする。

Quad

60年代、70年代の「マルチヘッド」テープディレイをエミュレートしたスタイル。

  • TAP A/B/C/Dは各テープヘッドでON/OFF出来る
  • 各TAPボタンはそれぞれLRペアとなっている。
  • SPACINGノブで各TAPのディレイ間隔を調整出来る
  • SPACINGの値が0の時は各TAPの間隔が均一になる。例えばディレイタイム500msの場合はTAP A=125ms、B=250ms、C=375ms、D=500msとなる(500÷4=125ms)
  • SPACINGの値がマイナスになるにつれて一番長いディレイタイムに各間隔が近づいていく。
  • 逆にSPACINGの値がプラスになると、一番短いディレイタイムに各間隔が近づいていく
  • Tap A/B/CはSpacingの値が0でなくなるとLRでオフセットする。
  • REPEAT/SWELLボタンはフィードバックの挙動を切り替える。
  • REAPTはTAP Dの値=DELAYノブで設定したディレイタイムをLRチャンネルでフィードバックさせる。TAPの定めたディレイを繰り替えす用途に向いているとのこと。
  • SWELLの時はONになっている全てのTAPがフィードバックされる。これはSPACE ECHO RE-201 と RE-301の挙動に近い
  • SWELLモードではフィードバックを強めると死の叫びみたいなハウリングになる事があるけど、モジュレーションやデチューンを強めればハウリングを起こさずにかなり強くフィードバックレベルを上げることが出来る。
  • SWELLモードでSPACINGの値を0にしてモジュレーションを強めると古めかしい宇宙船的演出のリバーブっぽいサウンドになる。

発振させて遊んでみた

とりあえず各機能などの紹介は終わったので後は各自デモるなり、公式サイトのサンプルを聴くなりしてください。

まあ何も無いのもさみしいので、最後にオマケでValhalla Delayをテキトーに自己発振させて遊ぶ動画で終わりたいと思います笑

うーん。楽しいけど、他の人が聴いても「だから何?」って感じだろうな笑

(終)