よく雑誌や教則本、ブログなどでプラグインの使い方とかミックステクニックと称してEQとかコンプレッサー等エフェクターのパラメーター設定などを紹介してるのを目にしますが、そういうのって大体の場合役に立たないですよね。
なぜかというと素材によって設定は様々なはずなのに、全てを一般化した表現がほとんどだから。
ロックのスネアにはEQで○Hzをなんちゃら、コンプレッサーはアタックをなんちゃら…って料理のレシピで言えば中華料理の肉には塩を○グラム、唐辛子を辛めでとか言ってるようなもんで、まずどんな肉なんだよっていう話です。
中華料理にも色々あるしさ笑
だけどエフェクターの実践的な使い方って説明書を見ても分からないものだから、初心者だったり、独学でやっている人はそういうのを真に受けてしまいがちです。
私自身もこれまで完全に独学でやってきたので、色々な情報に惑わされて来ました。(今もね)
まあこういうのは明確な答えがあるわけではなくて、各々が自分のやり方を見つけるしかないのですが、過去の自分に対して贈りたいアドバイスがあるので今回はそれを書いてみます。
題して「プラグインエフェクターを使ってミックスをするときの心得」
具体的な設定等は一才ないですが、過去の私と似た境遇の人とか誰かの役に立てばいいな~
そして今の自分自身への戒めの心得でもあるので、今一度再確認していきたいですね。。
ミキシングは工程的側面が強いとはいえ創作活動の一環。つまり明確な「答え」は存在しないアートな面もあるといえます。
だからそこには一才のルールは存在しません。いわばバーリトゥード。
例えば「コンプレッサーは必須だ」とか「コンプレッサーを使うな」とか「イコライザーの増減は何db以内」とか「リバーブは1つにする」とか色々アドバイスがあるけど、そんなん真に受ける必要ナシ。
多くの先人たちが言ってるような事は実際正しいのかも知れないけど例外だってあるはず。
やってみなきゃ分からないし、やってみて結果的にカッコいい音になれば何でもいいのです。
なので自由な発想で自分のスタイルを探そう。
当然ながら今回の投稿だって全てを真に受ける必要もなし。
エフェクターというのは音を変化させるものです。
なので「どう変化させたいか」を想像することが重要になります。
漠然と「良い音にしたい」ということでなく、変化後の音を可能なかぎり具体的に想像したい。
例えば料理人だったら「もう少し甘くしたい」とか「もっと辛くしたい」などと考えながら調味料を加えると思います。ただ漠然と「美味しくしたい」とテキトーに加えたりしない。
それと同じです。
とはいえ、なんとなくの思いつきだったりインスピレーションでエフェクターを試してみるのもアリ。
料理と違ってすぐにやり直しが出来るしね。
イマジネーションとインスピレーションが大事ってこと。
DAWやデジタル技術が発達してアナライザーなどが非常に便利になりました。
そういったアナライザー等は便利ですが、最終的に判断するのは自分の耳。
まず自分の耳でちゃんと素材を聴いて吟味した上で、アナライザーは活用することが望ましいです。
そして自分が想像した「理想の音」に近づいたのか、頭の中の音とそこで鳴っている音を自分の耳で聴いて比較しよう。
一番大事な事は「聴くこと」です。
人間の聴覚の特徴として、大きな音の方が良く感じるというのがあります。
エフェクターを使うと大抵もとの音より音量が上がります。中にはインサートしただけで微妙に音量が上がるものも。
この時プラグインのバイパスボタンを押してビフォーアフターを比較しても、音量の大きくなっているビフォーの方が有利です。
元と比べて本当に良くなっているかを確認したいのならば、聴覚上で音量が同じくらいになるように揃えて比較しましょう。
ちなみに最近のプラグインは自動でゲインマッチしてくれる機能が付いてることもあります。
自分の耳を信じろと書きましたが、それも絶対ではありません。
人間は様々な情報がバイアスとなって知らずに知覚が変化します。
例えばプラグインがバイパス(無効になってる)状態なのに、それに気づかずにツマミを動かすと音の変化を感じる…誰しも体験したことがあるのではないでしょうか?これは視覚によるバイアスですね。
その他にも著名なエンジニアとかアーティストの使用機材を使っただけで良い音になった気がしたり、高級なプラグインがフリーのプラグインよりも音が良いように感じたり、バイアスによって自身の知覚が無意識に変化します。
こういうのは完全にコントロール出来るものではありませんが、「バイアスにかかることもある」という事実を頭の片隅に置いておけば、時にはそれに気付く事が出来るかもしれません。
要は自分の知覚を過信しすぎちゃ駄目よってことかな。
エフェクターというのは万能ではありません。
やすりで石ころをキレイに削ることは出来ても透明なダイヤモンドには出来ないように、音も素材によってはエフェクターで理想の音に変化させる事が出来ない事が多々あります。
そういう場面に遭遇すると「もっと高級なプラグインなら」とか「ヴィンテージのアナログ機材なら」という幻想に逃げがちですが、エフェクターや機材ではどうにもならないことのほうが多いかもしれません。
つまりエフェクターに過度な期待をしないで、素材をメインに考えましょう。
使えない素材を自分で録音してしまったら次回への反省材料にすると。
ここまで読んでくれた方、あなた熱心ですね〜 どうでしたか?
こういうのは頭で理解しているつもりでも実際に実践するとなると難しく、本当に身につけるには相当な努力と経験が必要な気がします。当然ながら私自身も未だ修行の身で、しばしば見失うことも。
今回ここで書いた「心得」は自分への戒めの意味もありますが、自分と同じく独学でミックスやら何やらやっている人の何かポジティブなきっかけになれば良いですね〜
お互い頑張りましょう!
(終)