DMG Audio Equilibriumに関するQ&Aをクソテキトーに訳してみた
〜オマケでPhaseのOn/Offに関する個人的考察も〜

さてさて、前回DMG AudioのEquilibriumのマニュアルをクソテキトーに訳してみましたが、その続編です。

マニュアルでは分かりづらい部分がフォーラム(掲示板)で質問されていて、デベロッパーのDave Gambleさんが答えているのですが、その中でワタクシが役に立ったなと思ったものや、面白いなと思ったものを紹介してみます。

あと、IIRモードのPhaseオプションに関する個人的な考察もオマケで織り交ぜてありますー

前回同様ワタクシの英語力は「クソテキトー」ですので、あしからず。まあ多分半分くらいは合ってるよ笑

原文は一番下のリンクにまとめてあるので、そちらもどうぞ〜

では行ってみようッ

アナログ機材のモデリングに関する質問

Q:モデリングについての質問なんだけど、Nebulaのやつみたいに振幅特性と位相特性の他に高調波歪みも含んでるの?

Daveによる解答

まず、Raneによる素晴らしい記事があるんだけど、オレはマジで本当にコレを皆に読んでもらいたい。
Exposing Equalizer Mythology

読んだ上で、解答だ。

1、IIRモードではハードウェアと同じ振幅特性が得られる。そして位相特性も「ほとんど」同じものが得られる(デジタルとアナログとで世界が違うから、12kHz辺りから位相特性は歪み始める。更なるCPUを消費しないとデジタルをアナログと同一の位相特性には出来ない。)

2、Digital Compensationを使ったIIRモードは大体の場合は「ナシ」の時と変わらないけど、ハイエンドで複雑な仕事をする場合には「ナシ」の場合よりハードウェアの特性に近くなる。こいつはアナログとデジタルの伝達関数を計測して両者の違いを補うための短いインパルス応答をデザインすることで働き、その結果ミニマムフェイズに変換を得る、つまり位相遅れが可能な限り少ない特性だ。基本的にはこのフィルター(※Copensationのことだと思います)は何もしない。

3,FIRにしたら話はガラッと変わってくる。CPUパワーを使うことで振幅特性と位相特性どちらも一致させることが出来るんだ。Analogue phaseモード(それかゼロレイテンシー版)はアナログハードウェアと同一の位相特性が得られる。位相特性は振幅特性によって独自に定められる(180度の位相反転まで)。つまり、君はハードウェアがもたらす特性を得られるわけだ。これはサンプリングするようなものだよ。同じインパルス応答=全部同じってこと。

そして最後に…これらのEQは40年かに渡って高調波歪みを最小にすることを目標としてデザインされているんだ。EQのデザインは「常に」何よりも真っ先に線形性を持たせる意図があるんだよ。普通EQは全高調波歪が低い事を強調して売りだされてるよね。

唯一の例外はPultecだ。アレは少しドライブさせることが出来る。でもPultecのアンプは(Pultecはパッシブユニットでポストアンプ)完全にEQ回路の後段にある。つまり君はEQuilibriumの後ろに歪みを加えれば同じことが出来るんだ、しかも正確性は全く失うことなくね。

(言い換えればEQuilibriumには高調波歪みのモデリングはされていない。だってそんなもん無いんだよ。君がハードウェアをオーバーロードさせるような奇妙な考えをしないかぎりはね。その場合に君が得るのは単なるオペアンプのクリッピングだよ。99%の機体ではね。歪みが発生しないように、また高いヘッドルームを持つように設計されているんだから、君はEQuilibriumでそれを実現出来るってことだ(※最後の一文はかなり意訳)。

高調波歪みとかのモデリングがされてないってのは周知の事実だと思いますが、この解答ではDaveのEQに対するスタンスが読み取れますね。ていうか単に「歪は無い」って解答でもすむのに、かなり遠回りな解答ですな笑

Digital+compensationに関する質問

Q:Digital+Compensationってどういう事なの?コレを適用すればもっと良い音になるの?何を与えるの?Edge(※マニュアル参照)って何?トップエンドをEQするときだけに使えばいいの?それともEQしたとこ全てが良い感じになるの?

Daveによる解答

Digital+CompensationはIIRモードで作るカーブとアナログのカーブとの間でのスペクトルエラーを計算して、指定されたサイズのミニマムフェイズ補正フィルターを計算してる。多くの場合は何の変化も起きない(なぜならば、IIRモードは明らかにデジタルEQではなくアナログEQに近いサウンドだから)。でも重要なチャンネルや、ハイエンドに色々とやっている場合は、CompensationをONにしてみてOFFにした時と音が変わるか確かめる事ができるよ。

やっぱり聴いて判断しろ。ってことです笑 ナイキスト周波数での振幅特性を補正してるものみたいなので、ナイキスト周波数付近のイコラジングじゃなければ音は変わらないと思われます。

関連する話はこちら→イコライザーと位相に関するアレコレをまとめてみた

PhaseのON/OFFに関する質問

Q:デイブよ、”Digital+Phase”(※IIRモード+PhaseがOn)について説明してくれよ。どういう時にONにしたらいいんだ?逆にOFFにしたほうがいいときもあるのか?

Daveによる解答


君がONにした時の音が気に入ったらONにすればいい。アレはアナログEQの位相特性に近づけるやつだ。CPUを節約しながらFIRモードのAnalogue ZeroLatencyと同じような特性を得ることが出来る。

Q:オーバーサンプリングが出来るオプションは付けないわけ?

Daveによる解答


“Digital+Phase”(※IIRモード+PhaseがOn)はオーバーサンプリングと同じようなことをしてる(数学的な事はぶん投げて)。でもCPUコストとパフォーマンスの割合ではより優れている。

2つ目の質問の人が原文ではちょっとイケ好かない雰囲気を醸し出してたためか、なんかテキトーな答え方をしてるような気がします笑

・ちょっとオマケ:PhaseのON/OFFに関するワタクシの見解

Phaseボタンに関する質問ににDaveは基本的に「聴いて良ければONにしろ」というエンジニア的には極めて正論な答えをしてるのですが、「アナログ特性に近づける」みたいなことを言われたら聴かなくても常にONにしたくなっちゃいますよね。バイアスだってかかっちゃうだろうし。。

聴いて判断するのが正解っていうのは百も承知だけど、まだまだ未熟者のワタクシなので一応どうなってるのか知りたい!ってことで色々調べてみたので、僭越ながらPhaseモードに関するワタクシの独自見解もこの際紹介してみます。

まずPhase ONにしたときの位相特性と振幅特性を見てみると、こうなってました。

IIRモードDigital Compesnsation128+PhaseONで8kHzを10dBブースト(DMGカーブ)した時の位相特性
IIRモードDigital Compesnsation128+PhaseONで8kHzを10dBブースト(DMGカーブ)した時の振幅特性

PhaseがONの時にバンドを追加してちょっとでもゲインを変更すると、位相特性がナイキスト周波数に向かうにつれて180度の方向に回転していきます。そしてその影響のためか、ナイキスト周波数周辺での振幅特性がOFFの時と比べて「歪んでいます」。

ちなみにPhaseがOffの時の位相特性と振幅特性はこちら

IIRモードDigital Compesnsation128+PhaseOFFで8kHzを10dBブースト(DMGカーブ)した時の位相特性
IIRモードDigital Compesnsation128+PhaseOFFで8kHzを10dBブースト(DMGカーブ)した時の振幅特性

これを見る限りPhaseがONの時の特性は全然アナログの位相特性に近づいてないっていうかOFFに比べて振幅特性が悪化してるじゃん!とか、何か測定は出来ない現象があるのかな?など思いまして、どういう意図でこういう特性なのかを考えてみた結果ひとつの仮説を導き出しました。

この特性はLPF(ローパスフィルター)をする時の位相特性を補正する目的じゃないかという説です。

どういことかというと…

まず普通のIIRモードでLPFを8kHzに18/octで適用すると図のようになります。IIR製デジタルEQなのでナイキスト周波数で位相特性が0になってます。

IIRモードDigital Compesnsation128+Phase「OFF」で8kHzにローパスフィルター(DMG)をかけた時の位相特性

で、アナログハードウェアと同じ位相特性を作れるというFIRモードのアナログモードではこうなります。LPFによる位相回転が起こっていますね。これが「本来の」位相特性であるようです。

FIRモードAnalogue Phaseで8kHzにローパスフィルター(DMG)をかけた時の位相特性

ここで思い出すのが、IIRのPhaseをONにした時に位相特性が回転していく挙動です。なのでIIRモードで同じLPFの設定のままPhaseをOnにしてみるとこうなりました。

IIRモードDigital Compesnsation128+Phase「ON」で8kHzにローパスフィルター(DMG)をかけた時の位相特性

ズレてるけどPhaseがOFFの時よりもアナログで作れるという位相特性に近づいているように見えませんか?

この結果から導き出される仮説は…LPF(HPFも)とかの「フィルター」でカットオフを急激にすると位相特性も激しく回転することになるけど、IIRのナイキスト周波数ではデジタル領域の制限で位相特性が0に収束しないといけないため両者の位相特性に大きな差がでてしまう。この問題を解決するためにPhaseボタンのオプションがある…です。

どうでしょうか?あながち間違ってなさそうな気がします。

このモードで気をつけたいことは、別にLPFを適用しなくても例えば逆にHPFを使う時もPhaseをONにしていると位相特性がナイキスト周波数で180度に向かうようになってしまうことです。本来のEQの働きを期待するならばLPFを使う時以外はPhaseボタンはOFFにしたほうが無難「かも」しれませんね。

IIRモードのPhaseがONの時に50HzにHPFを掛けた時の位相特性。関係のないナイキスト周波数付近の位相特性も変化してしまっている。

ま、「本来の」イコライザーの働きじゃなくたって良いか悪いか決めるのは自分の耳なので。やっぱりDaveの言っているようにON/OFFの違いを「自分で実際に聴いて決める」というのが正解ですね。

製作者が言ってるんだから間違いないでしょう。

てことで、ちょっと長くなりましたがワタクシの見解でした。Q&Aに戻ります!

FIRモードとIIRモードの使い分けに関する質問

Q:ミニマムフェイズEQにするとして、FIRモード(“global minimum”, “analogue”, or “zero-latency analogue”)がIIRモード(“Digital+Phase” off, or “Digital+Phase” on)に比べて優れている点って?IIRモードはレイテンシーとCPUコストの点でFIRモードよりも優れているけど、FIRモードの優れているところは何?

Daveによる解答

事細かくインパルス応答をデザインすることができるところだ。FIRモードでは窓関数に関する設定が出来たり、位相を調整したり、色々と楽しめる。もし君が通常のEQの使い方をするならIIRモードで決まりだ。もしも他に何かやりたいことがやるなら、FIRモードは柔軟性のあるオプションを提供するよ。

つまり、一般的なアナログスタイルの累積的なミニマムフェイズEQを使いたいなら、IIRモードが良い。もしFIRフィルターのデザインを柔軟にしたいということなら、それはFIRモードにあるってこと。

各フィルターの使いどころについての質問

Q:Coincident, Butterworth, Chebyshevとか色々あるけど、どうやって使い分ければいいの?

Daveによる解答

※振幅特性に出る波のような特性の事を「リップル」という書き方にしました。何か上手いこと訳せないので…

確かにこれらのフィルターは主に工学的なフィルターだよね。

普通の「オーディオ」フィルターとして使うならCoincidentを使ってみよう。それかちょっとレゾナンスにバリエーションがあるDMGフィルターだ。

これは事細かく全部マニュアルに書いてあるんだけどね。

工学的な視点から考えると、フィルターをデザインするってことは何かを求めているということで、必要なものに応じて何かを代償する準備が出来ているということだ。ほとんどの場合エンジニアは大きく減衰させたくてフィルターをデザインする。

じゃあまず、君がフィルターに対して何も代償を用意していなくて、単純に最大限の減衰が欲しいとしよう。うん、それはButterworthだな。何の副作用なしにガッツリ削れる。

OK、君が更に鋭いスロープのカットオフにしたくて、パスバンド(※フィルターを通過する部分)にちょっとしたリップルが出るという代償を支払ってもいいとしよう(言い換えれば君はとにかく何かを取り除きたい、君が残したいモノにちょっと変なEQみたいな効果出ても気にしない)。そんな時は「Chebyshev」だ(タイプ1限定)。Chebyshevのタイプ2はストップバンド(※フィルターで減衰される部分)にもリップルが出るけど、オーディオの領域では平らになる。オレはEQuilibriumにタイプ2を実装してないけど誰もそれにもそれについて尋ねられてないな。タイプ1は音楽的な感じで、タイプ2はちょっと変ってことだな。

OK、じゃあ君が可能な限り鋭いスロープが欲しいとしよう。スペクトラム全域にリップルが発生する事を代償に君はそんなスロープを得るッッ それこそがElliptic (またの名をCauer、もしくはEquiripple) デザインだ。

要は0.1dBとかのリップルを気にしないのならchebyshev1やEllipticはButterworthよりも鋭いスロープに出来るということだ。でも覚えておいて欲しいのは、24dB/oct以上の設定にしないとこれらの特性は得られないってことね。48dB/octとかで試してみてくれ。

オーケーオーケー、カーブの鋭さなんてどうでもいい?もし君がマジでスムーズな位相特性を欲している場合━位相特性に変なゆらぎが無いような。ガッツリ削れる量を減らすことになるけど、Besselがソレだ。コイツはスペクトラムの持つ位相特性を保つのにとても良いんだ。

OK、君はリップルに神経質になっているって?君のインパルス応答にそんなもんは一切与えたくないと。だったらCritical(クリティカルに減衰させる)だ。

OK、君がフィルターカーブにフラットさを求めてなくて、振幅特性が上下に揺れない限り(下にだけ揺れる)鋭いカーブを求めているとしよう。ソレはLaguerreフィルターだ。

音楽制作の世界では今あげた基準なんてオレ達エンジニアは普通使わない━オレ達はスムーズで予想通りの挙動をするやつを求めている。ソレがCoincidentデザインなんだ。フィルター次数が上げれば同じカットオフ周波数に更なるフィルターを追加するだけ。(そして同じ所でカットオフ周波数が-3dBになるように周波数を補正する。)

DMGフィルターは普通のCoincidentデザインにレゾナンスを付けたやつだ。コイツで君が世にある音楽機材の中で発見できるフィルターの98%はカバーできる。(誤解のないように言うと、DMGフィルターはCoincidentフィルターから周波数補償を取っ払っている。なぜならば、ソレこそが世間一般で見られる典型的な挙動だからだ。君が12dB/octから24dB/octに切り替えれば、-3dBのカットオフではなく-6dBのカットオフを得ることになる。)

Harmonicsフィルターは調和のとれたレゾナントフィルターのセットだ。コレは特に科学的な何かを基にしてるわけじゃあない。特徴があって面白いよ。

All-Passは振幅特性に何も影響を及ぼさない。コイツはただ位相を調整するやつだ。次数を上げることで、君はスペクトラムの一部を遅れさせることが出来る(言い換えると、低音を遅れさせて、その上の大体はそのままにしとく)。周波数が選べるディレイみたいなもんだな。ただしいくつか追加しない限りそんなに変化は聴き取れないと思う。フルミックスの素材に対して48dB/octでQを3くらいにしたオールパスフィルターを同じ周波数ポイントに4つ加えて、そいつらをスペクトラム全体に色々動かしてみてくれ。スゲー変な感じになるよ(ニッコリ)。

根本的な前知識に抜けているところがあるためか、訳にかなり怪しいところがあります笑

以下、EQuilibriumの感想文

こんな感じでDaveさんの答えをいくつか紹介してみましたー

彼の解答からは一貫して「基本は自分で聴いて判断しろ」というクリティカルリスニング的なスタンスが読み取れる気がします。

「高調波歪みなんて必要ない」的な主張こそあれ、基本はちゃんと「聴くこと」を大事にさせようというスタンスは個人的にとても好感が持てます。ユーモアのセンスもあるっぽいしね笑

でもEQuilibriumでは設定をユーザー側で色々と変更出来るので、中々ちゃんと聴くことは難しいよな〜って思いました。

だって何か特性が変わるとかいうスイッチを押したら、結果大して変わらなかったとしても音の変化を大いに感じてしまいませんか?プラシーボ的なバイアス効果でさ。

そういう意味では非常に上級者向けなEQなのかもな〜っていうのがEQuilibriumの感想です。

ちゃんと使いこなすために、もっともっと「聴く能力」を鍛えていかないといけないな〜っと思ったのでした。

(終)
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