バンド系のミックスダウンにどれくらい時間がかかるか?

録音作品を作る工程の一つのミックスダウン

ミックスダウンとはこちらでも書いたようにマルチトラックレコーダーに録音した各トラックのバランスを取ってステレオトラック等の作品に仕上げる工程ですが、大体どのくらいの時間を要するものだと思いますか?

そんなもん素材や条件によって違うので一般化なんて出来ないのですが、たまに何となくチャチャッと出来ると思われているように感じることがあるんですよね〜

というのも、超低予算での自主制作の場合にリーズナブルな値段の8時間くらいのパックでレコーディングをするとして、まあまあ多数のバンドはこの限られた時間内で2-3曲くらいなら完パケさせることも難しくないと思っているのではないかと感じまして…

確かにその時間でも何らかの形の成果は残せるので不可能では無いし、スタジオ側はサービス業なので「出来ない」とは言えないでしょうし頼めばやってくれます。(むしろ時間内で完パケ出来ると書いてたり笑)

それに「プロは短い時間の中で素晴らしい仕事をしてナンボ」みたいな考えもありますしね。

そういった事情もあって、通常レコーディング作品を作るうえでミックスダウンにかける時間は予算が少なくなると短くなる傾向にあると思いますが、理想的にはどのくらい必要なのでしょうか?

長ければ良いというわけではありませんし、先にも書いたように内容によって変わるものだと思いますが、大体どのくらいあれば理想的なのかと。

まあやっぱり一般化なんて出来ないトピックではあるので、今回はワタクシの経験と巷で見かけた意見からミックスダウンにかける時間について考察してみたいと思います。

とりあえず一般的なポップス/ロック的なジャンルのバンドで、打ち込みではなく生演奏を録音した24tr〜48trくらいの素材に対するミックスダウンを想定します。

作業時間に影響する要素

何度も書きますが「ミックスダウンにかかる時間は内容によって違う」というのが一般的な共通認識です。

では、どんな内容によって作業時間が変わってくるのかを幾つか挙げてみます。

1.トラック数

やはりマルチトラックレコーディングのミックスダウンにおいてトラック数は作業時間に大きく関わります。

ボーカルとアコギの2トラックのミックスよりも、ドラムやベースその他上モノ合わせてトラック数が多くなるバンドのミックスダウンの方が作業時間が掛かるのは当然といえば当然ですよね。

トラック数が多いと、それを管理するのにも時間がかかります。

同じパートを部分的に分けてレコーディングしたものを一つのトラックにまとめたり…そういうトラック管理って地味に時間を消費する要素ですね。

アレンジ的にもシンプルでもギターアンプに対してマイクを3本立てるような、同じソースに対して複数のトラックを用意している場合も選定やバランスを取るのに時間がかかることがあります。

トラック数が多いと大変というのを例えるならば、商品が1つだけのお店より色々な商品が置いてあるコンビニの方が商品陳列にかかる時間が多くかかるのと同じ的な。

2.曲の長さ

曲が長ければ長いほどに、聴く時間も長くなりますので作業時間も必然的に伸びます。

8分の曲だったら書き出すだけでも8分かかる。7回通して聴いただけで約1時間も…

曲が長いとオートメーションを書くのも大変ですね。

例えるなら16ページのマンガよりも32ページのマンガの方が描く時間がかかるよねっていう感じ。

3.修正の有無/量

ピッチ修正、タイミング修正、ノイズ除去、etc…

そういった「エディット」的な作業を求めるほどに、全体の作業時間もかかります。一般的にはやはり人が歌ったり演奏する楽器を録音した素材に対してエディット的な作業が求められます。(打ち込み自体がエディットなので当然ですが)

トラッキングの時に時間をかけて、録り音=ミックスする素材の質を高めればエディット的作業は不必要になっていくものですが、予算が少ない場合は「後でミックスの時に何とかしよう」という発想になりがちな気がします。

後回しにせよ先にちゃんとやるにせよ、結局のところ求めるサウンドを得るには十分な時間が必要になるのですけどね…しかも後からどうにもならないことも多いし

そもそもエディット的な作業はミックスダウンの内に入らない…という考えもあると思います。例えば大御所のエンジニアにミックスダウンを依頼する場合にボーカルのピッチ修正までその人に頼むかというと…頼まないでしょうね笑

ちょっと脱線:2曲目以降はほぼ時間がかからない?→そんなことはない

1曲目はミックスに時間がかかるけど、2曲目以降はプリセットで一瞬で終わる…わけではありません。

曲調が全く同じで同じ日に同じ設定でレコーディングしている場合だったら、ある程度の時間は短縮出来ますが、オートメーションの情報は曲によって全く変わるので適用できないのですね。

そしてオートメーションを書くのもそれなりに時間がかかると。

まあ時間短縮が望めるのは本当ですけど、プリセット一発で「ハイOK!100%完璧!」とはならないです。(それで良しとするかどうかは人それぞれですけど)

それに曲調が違うような場合だと、そもそもプリセットも適用出来ませんしね。

巷で見かける一般論的な意見

とりあえず世間ではどう認識しているのかと思い日本語で検索してみたのですが、やはり時と場合による話題なのであまり具体的な情報は出てきません。

しかし、そんな中でもリーズナブルなレコーディングサービスを提供しているスタジオさんは「最低でも1〜2時間はかかります。」という事を書いているケース多いように感じました。

まあパック料金6-8時間で提供している場合は1日で完パケを要求されると思うので、そのぐらいの時間で書かざるを得ないと思えますが、これによって初心者や未経験者に「ミックスダウンにかかる時間は大体1-2時間程度なんだ」という認識を与えてしまいそうで怖いですね。

あくまでも「最低でも」っていう条件があることをスルーしてほしくないです。

あとちょっと前にtwitterで流れてきたアンケートでこんなのがありました。↓(貼り付けたらアンケート結果が表示されなかったのでリンクです。)

https://twitter.com/OwMyOwl/status/915039167754543104

前提条件が無い(いわゆる「〜歌ってみた」という歌とオケだけのミックスも含まれていると思われる)ですしサンプル数も少ないですが、ここでは6時間以上が一番多いという結果ですね。

外国の意見はどうなのか英語で検索してみたところ、やはり「プロジェクトによる」ということで、コレと言ったまとまった意見は観られませんでした。

ただ1曲をミックスするのに数週間かけるという意見や、数日かけるという意見がざらに出ていて、2-3時間とかそれ以下という意見の方がかなり少ない(というかほぼ無い)と感じました。(※ワタクシが確証バイアスにかかっている可能性あり)

まあ極々一部の意見に過ぎませんけど。

有名ドコロのエピソードだと、世界で一番売れているアルバムであるMichael JacksonのThrillerの1曲目“Bille Jean”のミックスダウンは最初の2テイクが1-2日で、その後1週間で91回もリテイクをしたそうです。

でも最終的に採用されたのはテイク2だったそう笑

ワタクシ個人が必要だと思うミックスダウンの時間

自分の場合はどうかと思い返してみると…測ってないので憶測にすぎませんが初めて担当する人のミックスダウンには手始めに4-5時間くらいは欲しいかなーっていう印象です。(※24tr以上のバンド系のミックスダウンで、トラックの整理とか、ピッチ修正やタイミング修正等のエディット作業が無い場合=ミックス以外の仕事が無い)

そこから何回か修正して完成に近づけるという流れで、リテイクなどを重ねて最終的に7-8時間くらいあればある程度満足行く結果になる気がします。(あとは好みの問題で修正が増える度に時間がかかる)

もちろんピッチ調整みたいなエディット的な作業がある場合は更に時間がかかるでしょうし、トラック数がとても多い場合でも更に時間はかかるでしょうけど。

あとアレンジが上手くいっていないとか、自分に馴染みがなさすぎるジャンルのアレンジの場合もバランスを求めるのに時間がかかりますね。

それに、色々なパターンを試すという場合も時間はかかりますな。素材を活かしたナチュラルなミックスじゃなくて色々ギミックを施すようなやつは一筋縄でいかないことが多いです。

そういう特殊なパターンでも、2回目以降はノウハウを既に得ているからある程度の時間短縮が出来ます。バンドが同じ人にレコーディングやミックスをお願いする事が多いのは、やり方が分かっていて時間短縮ができるからというのもあるのでしょう。

前に手に入れた練習用の素材で、すごくアレンジもしっかりしていて録音の具合も素晴らしかったものは、バランスを取るだけでほぼ完成な感じだった(これ練習にならなくね?と思った笑)ので、クオリティの高い素材が用意出来ればミックスにかかる時間も少なく出来るでしょうね。

で、結局どんくらいミックスダウンに時間がかかるのさ?

で、結局どんくらいミックスダウンに時間がかかるのかっていう問には、やっぱり素材や状況によって違うとしか言えないのですが、確実に言えることは…

1-2時間で完璧なミックスダウンは不可能。

(アレンジと演奏がしっかりしていて丁寧に録音された素材の場合は除く)

ということです。(結局コレが言いたかった笑)

単純にミックスするだけなら別に30分でも出来るけど、素材のポテンシャルをフルに活かしきれないかもよっていう話ですね。特にポップスやロックなどの、ある程度音にエフェクトを必要とするようなジャンルでは…

まあ完全に打ち込みだけのような場合は話が違ってくるでしょうけどね。実際ワタクシが打ち込みで気ままに作ってる曲とかのミックスダウンは1時間くらいで終わる気がします。(トラック数少ないし)

でもバンドとか生音を録音した素材を扱う場合はミックスダウンにも十分な時間が必要だってことです。逆に言えばいつも1-2時間でミックスダウンをお願いしている方はもっと時間をかけたら、もっと良くなったかもしれませんよ?

ちゃんとミックスダウンにも時間を取って下さい。

てことで、ちゃんとした録音作品を作るのには時間がかかるのです。

時間がかかるってことはお金もかかるので自主制作なバンドさんは財政的には厳しいかもしれませんが、録音の時にしろミックスの時にしろ、時間を十分かけて良い音源を作って欲しいですね〜

その録った音源が未来に残されるモノになるわけですしね。

立ち会いでトコトン突き詰めるのは予算的に難しい!って場合は、オンラインで頼むのもアリだと思います。細かい調整には不向きですが、相性の良いミキシング野郎に出会えたらコスパはかなり良いと思います。

あ、ワタクシ、オンラインでミックスダウン承ってますので是非ガチャ気分でお試し下さい笑(宣伝)

見てないからと言って1-2時間で終わらせないし、マキシマイザーで誤魔化さず丁寧にやりますよ〜

あと、自称ミックスダウンの天才です(爆)

(終)

参考にしたページ(思い出せる限り)