プラグインのアナライザーとかEQカーブを消してみよう
〜音は視ずに耳で聴こう〜

去年の11月にDMG AudioのEQuilibriumを導入してから約1年経ちましたが、すっかりミックスで使うEQの90%を占めるようになってしまいました。(ちなみに残り10%はUad-2のmassive passiveとかMcdspのAE400とか)

もうミックスでよく使うEQの投稿で書いた状況とは違ってますね笑

ミックスでよく使うプラグイン~EQ編~

2016.09.19

EquilibriumはプラグインEQなので当然の如くEQカーブが可視化出来る画面と周波数のバランスが見れるアナライザーも付いていたので、導入からしばらく何の疑問も無くそのまま使っていました。(アナライザーはOFFでしたが)

画像1:EQuilibriumのEQカーブが表示される画面、この画面のバックにアナライザーを表示させたりもできる。

FabliterのPro-Qだったり、DAWに標準で付いているEQも基本的にそういったアナライザーや画面が付いていて、EQカーブが可視化出来るのが一般的で確かに便利です。

なのでDAW時代にミックスを始めた人は基本的にEQカーブが見えている状態が「スタンダード」になっていると思います。

アナログEQのエミュレート系でGUIもアナログ機器を模しているプラグインの場合は違うかもしれませんが、サージカルな場面では視覚的な情報が出るプラグインを選択している人が多いのではないでしょうか?

ワタクシも一応DAW時代の現代っ子的なもので、そういった傾向にあったわけですが、ある日なんとなくEQカーブを消してノブだけのGUIに変更して試してみると印象が全然違う…なんというか、よりちゃんと聴かないと上手く処理が出来ない。

画像1のEQカーブをノブだけで表すとこうなります。

そんな体たらくっぷりで、「ああ、頭では分かってたつもりだったけど自分も視覚情報に大きな影響を受けていたのだなぁ…」といささかショックを受けた次第であります笑

それからというものEQuilibriumはノブだけのGUIにしてます。最初は違和感があったけど意外とすぐ慣れました。思えばEQuilibriumがメインになる前はSlate DigitalのVMRをよく使ってたし、その前はWavesのSSLとか好きだったしな。

まあそんなことがあって皆にも「EQのGUIはノブだけにして視覚的情報は出来るだけシャットアウトしたほうが良い!」っと言いたくなったので、ついでに視覚が聴覚に与える影響の有名な例などを挙げてこじつけてみます。

感じてるものが本当だとは限らない

人間が見たり、聞いたり、味わったり、感じたり、知覚をする時に実際の現象と感じているモノが違う…という事があります。

分かりやすい例で言えば錯視、錯覚で、たまにテレビとかでも紹介されていると思います。

ひとつ例をあげますと以下の2つの図形の真ん中の線は同じ長さです。(ミュラー・リヤー錯視)

クリックするとgif動画になります

本当は同じ長さなのですが、両端にちょっと線を付けるだけで明らかに違う長さに見えますよね?

こんな感じで人間の知覚というのは色々な情報によって歪むことがあります。

そしてこれは聴覚でも例外ではありません。以下の動画を見てみて下さい。

女性の発する言葉がハッキリと分かりますか?

この動画はマガーク効果という現象を実演しています。

「ガ」という言葉を発している映像に後から「バ」と言っている音声を重ねると、なんと言っているのか非常に分かりづらくなるのですね。(眼を閉じたり、種明かしをされた後は「バ」と聞こえるようになる。)

ようは耳に入ってくる情報が、視覚の情報(ここでは唇の動き)によって影響を受けて実際に聞こえる音に影響を及ぼしているという例です。

空耳アワーも似たような作用ですよね。字幕を表示されると外国語の歌が日本語に聞こえます。

音楽制作的な場面に当てはめてみる

この視覚の情報に聴覚が影響される現象を音楽制作的な場面にこじつけてみると、誰しもが経験する場面が浮かびます。

例えば…違うトラックに挿しているプラグインのパラメーターを弄っているのに気づかないでプラグインが刺さってないトラックに音の変化を感じる…とか、プラグインがバイパスになってるのにEQの増減を感じる…とか…笑

おそらくほとんど全ての人が経験するようなこれも、視覚の情報に影響された例ですよね。

この例はすぐに聴覚情報と視覚の情報の誤差が大きくなり異変に気づきますが、今回の本題であるEQについているカーブ画面やアナライザーはどうでしょう?

EQのカーブだとか周波数のスペクトラムアナライザーというのは間違った情報では無いですが、おそらく眼で見えている情報(カーブの形とか周波数分布の具合とか)に少なからず影響を受けているのではないでしょうか?

もし、そうであるのなら、実際に聴こえているはずの「音」が変わってしまっていると言えませんか?

ミックスやマスタリングなどの録音作品を作る工程では何よりも第一に「聴くこと」が大事だというのがセオリーなのに、その聴くことが視覚の情報によって疎かになっているのではないか…

「いや、単なるツールなんだから使う人次第だよ」という意見はごもっとなのですが、人間の先天的にある認知の仕組みにそう簡単に抗えるのか…というのが非常に疑わしく思うのですよね。

それこそ視覚の情報に聴覚が影響されないような訓練をするとかしない限り、やっぱり無理なのではないかと。

そして、そんな訓練を積んだ人はもうアナライザーなんか必要なくなってるであろう…笑

アナライザーなんて捨てちまえ

というわけで、まだまだヒヨッコであるワタクシはEQからアナライザーを捨て去りました。

ミックスの時にVector Audio Scopeを見ちゃうクセがあるので、そちらも何とか脱却したいと思います。

まあ、アナライザーを完全排除するためには相当に正確なモニター環境が必須になってくるので難しいところではありますが、とにかく全ての基本である「聴くこと」をもっと大事にして精進して行きたい所存であります。

基本が大事!…だろ?ゴリ

おわりに

今回は視覚が聴覚に影響を与えるという例を出しましたが、やっかいなことに影響を与えるのは視覚だけではないです。

単なる前情報だったりだけでも感じる知覚が変わり、そういう現象を「認知バイアス」等と表現したりします。

例えば無料で配布されているプラグインより値段の高いプラグインの方が無条件に高品質と感じた場合、もしかしたら認知バイアスの影響を受けているのかもしれませんね。

色々な認知バイアスがあるので知っていおくと楽しいですよ。

また機会があればまとめて書いてみようかな〜

(終)