Ryan Adams “Ashes & Fires” (2011)

Ashes

 
Year2011
StudiosSunset Sound
ProducersGlyn Johns
EngineersGlyn Johns,
Bob Ludwig

以下、私の感想文

アメリカのシンガーソングライターRyan Adamsの2011年リリース通算13枚目のスタジオアルバムです。

アコースティックギターをメインにしたバンドのオーセンティックなフォーク的アレンジで、力強く、そして美しい響きを持った傑作じゃないですかね〜

楽曲も彼のキャッチーなメロディーが冴えわたってて非常に素晴らしく、今の所出ている彼の作品の中で個人的に一番好きなアルバム!

Ryanは2007年頃にメニエール病を患ってしまってから左耳の耳鳴り等に悩まされ、2009年に一旦音楽活動を休止しているんですね。

その間結婚したり拠点をニューヨークからLAに移ったり、環境を変えながら徐々に活動を再開しはじめ、満を持しての復活作となったのがこの作品。

本人はこの作品のアコースティックなフィーリングが耳の疾患によるものでは無いと語っていますが、一方で「もうラウドな音楽はやりたくない」とも語っていました。

本作のプロデュースに当初は2001年のアルバム”Gold”(これもとても良い作品)等、いくつかの作品でプロデュースを務めていたEthan Johnsに頼むつもりだったそうですが、その時期ちょうどスケジュール的に都合が合わなかったために、彼の父親であるGlyn Johnsにプロデュースが務めることになったという話です。

glyn_ryan
Glyn Johns と Ryan Adams

Glyn Johnsといえば、Led Zeppelin, The Rolling Stones, The Who、Bob Dylan等の名だたる有名バンドの録音を担当するなど、60年代から活躍している大ベテランのレコーディングエンジニア/プロデューサー。

本作の持つオーセンティックな響きは彼のプロデュースによるものが大きいのではないかと思いますが、やっぱりそういう偶然のめぐり合わせが記録として残される所もレコーディング作品の面白い要素ですよね〜

レコーディングはこれまた老舗のハリウッドにあるスタジオSUNSET SOUNDにて。ウォルト・ディズニーの作品からロックの黄金時代のバンドなど様々な作品が作られて来たアメリカの文化遺産的スタジオです。

APIのコンソールで〜とインタビューで語っていたことから部屋はStudio3だと思われます。

録音は主に一発録りで、Ryanもアコースティックギターを弾きながら歌も録音するという極めて「ライブ」な方法が採用されていて、個々の演奏能力やRyanの表現力ってのが際立つ非常に素晴らしい出来!

2インチのリールテープにマルチ録音し、ハーフインチのテープにミックスダウンするという「アナログ」なプロダクションですが、別にアナログ感をもたらすためではなくGlyn Johnsにとって普通のワークフローなのだと思います。

その全体的な音質はとてもクリアで気持ちの良い音。アナログといえば温かみとか歪みとかを求めがちだけど、元々はいかにクリアに録音出来るかを求めて作られているのですよね。

Ryan自身もあまりPro tools等のデジタルワークフローが好きではないらしく過去でも2007年のEasy Tigerでしかデジタルな環境で製作をしていないらしいです。

で、そのデジタル嫌いな理由が面白くて「欠点や間違いとかは人間の魅力の一部なのにちょっとミスったとこをエディットして正確さを求めてどーすんの?誰もそんなとこ聴いてねーよ」(超意訳)とのこと

個人的にとても共感する主張ですね〜 それにアナログはデジタルよりも音が良い〜みたいなふわっとした主張じゃないことに好感をもてます笑

まあ別にデジタルでもエディットしなけりゃ良いしアナログテープでも切り貼りは出来るので、この主張は「デジタルvsアナログ」的な話では無いですが、人間の演奏に含まれる「不確かさ」が魅力だというのはその通りだと思います。

その魅力を録音しなきゃ勿体無いでしょっていうね(とはいえ本作は全然ミスらしいミスなんて無いですけど。)

ともかく、そういった趣向のソングライターと演奏力のある仲間たち、経験豊かなプロデューサー/エンジニアが集まって製作された本作は、全体的な雰囲気やフィーリングがしっかりキャプチャーされていている素晴らしい録音作品なのです。

やっぱりRyan Adamsは才能豊かだな〜

あとは、近年のCDにありがちなダイナミックレンジの狭められたマスタリングではなく、「適正」なダイナミックレンジが保たれている事も非常に良いと思います。(ホントはこんな事記す必要は無いはずですが…)

こういった作品が2010年台にリリースされていることが嬉しいですね。

(終)

(余談ですが、せっかくアナログな環境で造っているのに近年のBlue Noteからリリースしているアルバムのダイナミックレンジが狭いのはどうなんだ?ってとっても疑問です。)

参考にしたページ(思い出せる限り)