Gilberto Gil / Jorge Ben “Gil E Jorge” (1975)

300_gilehorge

Year1975
StudiosCIA Brasileira De Discos Phonogram Rio De Janeiro
ProducersPerinho Albuquerque,
Paulinho Tapajós
EngineersLuis Claudio Coutinho,
Luigi Hoffer,
Joao Moreira,
Paulinho Chocolate

以下、私の感想文

ブラジルの国民的なミュージシャンであるGilberto GilとJorge Benが1975年に発表した作品です。

2人とも70年代のブラジルでファンクやソウルなど「新しい」音楽を取り入れて、その後に大きな影響を与えた人物のようです。

Gilberto Gilは2003年にブラジルの文化大臣に就任するなど正に国民的。(サッカーで言えばスポーツ大臣に就任したジーコ的な?)

一方のJorge Benもセルジオ・メンデスが演奏し世界的に有名な曲”Mas Que Nada”(日本人でも大抵どこかで聴いたことある曲)を作曲するなど負けず劣らずの知名度です。

そんな2人を中心に作られたこのアルバムは私が好きな「録音作品」の良さを凝縮したような作品で素晴らしい出来なのですよね〜

お互いの既発曲を中心に「即興的」な演奏もふくんだジャムセッションを録音した作品のですが、一緒に演奏する楽しさや熱さみたいなものが物凄く伝わってくるのですよ。

2人の歌とアコギに加え、ベースとパーカッションという編成で演奏されるアコースティックなアレンジですが、その歌と演奏は熱い熱い!邦題が「ブラジリアン・ホット・デュオ」なのも大いに頷ける熱さ

一応事前にリハーサルはしていると思いますが、お互いの演奏に反応しあう即興的なフィーリングで掛け合いなどを絡めていくスタイルで、曲の後半になるにつれてどんどん熱が上がり時にはテンションが上がりすぎて掛け合いがズレちゃうことも笑

そういった予定調和でないズレが含まれた全体のフィーリングが非常に好きなんですよね〜

とはいえJorgeの方は録音最中ミステイクについて結構心配していたみたいですが、年長者のGilbertoの方が「良いよ、最高だよ!」という風にリードしていたみたいです。超グッジョブ!

2日間で行われたという録音はもちろん一発録りで、余計なことを一切していないっぽい生々しい音が素晴らしい!

余計なことはしてないとはいえミックスダウンで得られた全体の「バランス」がまた絶妙で、メインの二人の音を若干左右に分けて広がりを持たせつつ逆側にディレイを送ることでまとまりを持たせていたり、良い仕事してるんですよね〜

プロデューサーに名を連ねているPerinho AlbuquerqueとPaulinho Tapajósの2人もブラジルの作編曲で主にディレクションを担当していたみたいですが、本作の結果を聴く限り良い仕事してますねぇ

あまりこの作品の情報が見当たらなかったのですが、ブラジルのブログ?で、この作品が生まれるきっかけになったというエピソードがあってそれが面白いです。

英のレーベルRSO RecordsのオーナーRobert Stigwoodが休暇にEric ClaptonとCat Stevensを連れてブラジルを訪れた際に現地のミュージシャンと親睦を深めてもらおうと、友人でありPhonogram Recordsのブラジル代表だったAndré Midaniに掛けあって食事会みたいのが開かれたのですが、そこにGilとJorgeも招待されてたのですね。

そこで当時ブラジルでも有名だったクラプトンにギターを弾いてもらおうと頼んだけど弾きたがらなかったので、代わりにとGilとJorgeが一緒に演奏してみたらすごく良い感じになって盛り上がり、「明日にでもレコーディングスタジオ行ったほうがいいんじゃないか」みたいな話も飛び出しトントン拍子でレコーディングとリリースが決まったそうです。

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(オリジナル盤のジャケ)

この話の真偽は不明ですが(そもそも元がポルトガル語だから正しく理解できたかも怪しい笑)、本当だとしたら偶然の巡り合せによって生まれた「奇跡」の名盤ですね〜

こういった偶然で発生する出来事をパッケージングして後世に伝えることが出来るのが録音作品の良い所ですよね

各曲が結構長い(1曲6分〜14分!)ので、当時は2枚組のLPでの発売でジャケもCD盤のものとは違うものだったみたいです。日本盤のLP盤のジャケは最初から二人の写真の方だったっぽい。

オリジナル盤にはタイトルが多分ナイジェリアの神様/妖精の名前から取った”Ogum & Xangô”というものが付けられていますが、盤面には”Gil e Jorge”としか載ってなかったみたいなのでその後そっちが一般的になったのかな?

しかしながら、音楽の楽しさや誰かと一緒に演奏することの醍醐味ってのがよりプリミティブにパッケージングされているこの作品を聴くと、ちょっとくらい演奏をミスったりズレたりしたって構わないし全体の良し悪しには関係ないんだって事を改めて教えられますねぇ

ちょっとくらいミスってたとしてもパンチインなんてしなくていいんです!(カビラ風に)

てことで、中古屋さんとかで見つけたら是非GETして下さい。

(終)

参考にしたページ(思い出せる限り笑)