Year | 1972 |
Studios | De Lane Lea Studios |
Producers | John Schroeder |
Engineers | Alan Florence |
以下、私の感想文
1971年に英国ロンドンで結成された英国初(自称)のブラックバンドCymandeのファーストアルバムです。
全員がカリブ地方にルーツを持つという彼らは、それぞれの出身地のフィーリングとファンク、レゲエ、ジャズ、ソウル、アフリカン等と融合させたオリジナリティ溢れる音楽を作っていて最高なんです!
意図的に融合させたというよりはそれぞれのルーツっぽいフィーリングが滲みでてきちゃった感が好きだな〜 あとジャケも怪しい雰囲気で良い笑
音楽性も録音の感じも当時の英国のバンドとは思えなく非常に不思議な雰囲気をまとっているんですよねぇ
これぞまさしくミクスチャーって感じです。
この作品が生まれるにあったて非常に大きな役割を果たしたのはプロデューサーのJohn Schroederですね。
Sounds Orchestralというイージーリスニング系のインストプロジェクトでプロデュースや作曲等をするなどしていた英国の音楽家/プロデューサーだったのですが、その彼とバンドの出会いがとても運命的で。
とある日に審査員としてオーディション会場へ向かっていたJohn Schroederが場所を間違えて入った(オーディションがキャンセルになって適当に入ったという話もあった)とてもローカルなクラブでリハーサルをしていたCymandeを「発見」し、すぐにその音楽に魅了され速攻で契約に至ったという話です。
まさに運命的ですな〜
バンドメンバー達はそれまでレコーディング等の経験がなかったらしいのですが、レコーディングスタジオの手配など全てをマネージメントしてくれたらしいです。しかも自主レーベルなので自分のお金で。
そして素晴らしいのは、そういったレコーディング等の経験が無いバンドにもかかわらず、バンドの持っていたサウンドをパッケージングするためにバンドを尊重したマネージメントをするという判断。正にプロデューサーの鑑ですな!
そのおかげでリラックスして挑めたのかバンドの持つ怪しい雰囲気みたいなのがしっかり録れている気がします。
曲によってはストリングスを入れてみたりとアレンジ面での仕事もしたりで、60年代にA&Rからキャリアを始め、作編曲などもこなしてきた経験の豊かさが素晴らしいプロデュースワークを生んだのかもしれませんねぇ
バンド自体は60年代にベースのSteve ScipioとギターのPatrick Pattersonによるジャズバンドが始まりで、特にMiles DavisやDave Brubeckの3/4拍子と6/4拍子とかのリズムに影響を受けたそう。
その後ナイジェリア出身のドラマーと一緒に演奏をしたことで西アフリカのリズムにも影響を受けたことがきっかけで、従来のジャズバンドではない新しい「オリジナル」なバンドを組もうと結成されたのがCymande
ジャズやアフリカのリズムに加え、メンバーのルーツであるカリブ海西インド諸島のフィーリングが混ざり合い独特の音楽性が生まれたのですね。
レコーディング模様について詳しい情報はありませんでしたが、同時期にJimi HnedrixやDeep Purpleの作品が録音されているDe Lane Lea Studiosで行われたらしいです。現在もWarner Bros傘下のスタジオとして現存。
個人的にイギリスのレコーディングはアメリカに比べるとややオーバープロセスな傾向があるように感じているのですが、このCymandeの作品は良いバランスなうえ、同時期のアメリカのバンドにはない独特の質感になっていると思うんですよね〜 それが良い!
本作は英国本土ではプロデューサーであるJohn Schroederの自主レーベルAlaska Recordsからのリリースでしたが、アメリカではChess Records傘下のJanus Recordsからリリースされ、シングルカットされた”Bra/The Message”がビルボードチャート48位になるなどプチヒットを記録。
そしてアメリカツアーではAl Green, Ramsey Lewis, Kool & The Gang等と共演し各地を周り、有名なアポロシアターにて英国のバンドとして初めてパフォーマンスしたり、人気番組”Soul Train”に出演するなど一定の成功を収めたのでした。
たしかに当時のアメリカではかなり受け入れられそうな音楽性ですよね〜
しかしながら当時の英国では異質すぎたのか受け入れられず商業的成功には程遠く、続く2枚のアルバムをリリースするもサッパリ売れないどころか、ライブも散々だったようです…
ツアーで好意的に迎えられていたアメリカへの移住の話もあったようですがメンバーはそれぞれ既に家庭を持っていたために断念。特に英国内では惜しまれずに活動を休止してしまうのでした。。
しかし時は流れ、後にヒップホップやハウスなどの音楽でサンプリングされたりるなど80年代後半から90年代以降になってレアグルーヴ再評価されはじめ、ディスクガイドでもお馴染みの音源に。
更にはなんと去年2015年に40年ぶりにアルバムをプロデューサーとエンジニアも当時と同じメンツで制作して発表してるんですね〜(しかしそのアルバムからはかつての怪しさが無くなっていた…)
でも半世紀近くたっても厚い信頼で結ばれているプロダクションチームなんて良いですね〜
(終)
参考にしたページ(思い出せる限り)