
当サイトでも度々話題にしているラウドネスノーマライゼーション。
日本でも徐々にですがその存在も知られてきているようで、「Youtubeとかにアップロードした楽曲の音がなんか小さくなった!(ぷんぷん)」みたいな声が耳に入ってきたりします。
ですが、各ウェブサービス(YoutubeとかSpotifyとか)が、どのような基準でラウドネスノーマライゼーションを適用しているのかを公式に公表していないもんだから、スキモノの人々が各々テストしてあれこれ推測している状況でした。
かくいうワタクシもYoutubeとSpotifyのラウドネスノーマライゼーションについて検証してます。
ただ、こういう検証の記事はある程度知識ががある人じゃないと分かりにくいという側面もあるのだろうなーっという感触があります。文字数多いし笑
そんな状況でしたがココに来てスゴク分かりやすいWEBサービスが登場しました。
「細けぇ事はいいから、ラウドネスノーマライゼーションで俺の楽曲はどーなっちまうか教えてくれよッッ!」という方にうってつけです笑
気になるそのサイト名は”Loudness Penalty”(ラウドネスペナルティ)という無料のWEBサービス。
反音圧戦争的な啓蒙活動やMeterplugsというプラグインメーカを作ってダイナミックレンジのメーター等作ったり、自身もマスタリングエンジニアであるUKのIan Shepherdさん主導で(?)作られています。
そのサービス内容は至極単純明快で、測定したいwavかmp3をアップロードすると各ストリーミングサービスのラウドネスノーマライゼーション後に何dB音量が下げられるかを推測してくれるというもの。
例えばこの曲
測定してみると

こうなりました。ワタクシが確認出来るYoutubeとSpotify、iTunesで答え合わせをしてみると。。
Youtubeだと-0.1dB基準より低くノースコアで正解。
Spotifyは実測値の場合-1.3dB低くなっててコレも0.1dBの誤差で正解。
iTunesもサウンドチェックの情報をみてみると-2.9dBでコチラも0.1dBの誤差で正解。
iTunesに関してはラフな計算という補足がついているものの、全体的に結構正確な結果が出ると思われますよ!
ちなみに、iTunesは曲のファイルの情報の中でノーマライズ量が確認出来ます。あと、環境設定の「再生」項目の「音量を自動調整」というところにチェックを入れないとラウドネスノーマライゼーションは働きません。

Youtubeは動画画面の中で右クリックで「動画統計情報」という画面からノーマライズの量が確認出来ます。

ので、一応この2つのサービスは答え合わせが出来ますね。
ちなみに基準値よりも低い場合、YoutubeとTidalの場合は音量に影響が出ないので数字は表示されません。
その他サービスについては基準値までプラスいくらかを表示します。
Spotifyは基準値より低い楽曲の場合ちょっと音量を上げられて内部リミッターの影響が出るよという補足が出てきますね。
あと、Spotifyはアルバム単位でのノーマライゼーションが適用されるようなので、ここでの数値はシャッフルモードやプレイリスト内での再生の時の値だと思います。
それからSpotify無料アカウント版ではラウドネスノーマライゼーションはありません。
単純明快なWEBサービスで使い方はすぐに分かると思いますが、じゃあ出てきた数値を見てどうすればいいのか…?
これは各々が決めることですが、ワタクシの考えを書いてみたいと思います。
まず最初に主張したいのは、ラウドネスノーマライゼーションによってデフォルトの再生音量が下げられたとしても、その楽曲が持っている絶対的な質感や価値というものは変わらないということです。
ラウドネスノーマライゼーションによって楽曲の「音圧が低くなる」ということを懸念する方がいますが、変わるのは他の楽曲との相対的な関係性だけで、その楽曲に内包されている「音圧」は変わらないということ。
だから、もし「ラウドネス・ペナルティ」で測定した結果、各プラットフォームで音量が下げられてしまうと分かったとしても、自分がその楽曲の質感に自信を持って満足していると言えるなら何も変える必要はありません。
誰かに海苔波形と罵られようが自信を持ってリリースすれば良いのです。
一方で、何かの質感と引き換えにマキシマイザーに突っ込んで平均音量を上げていたのなら…「ラウドネスペナルティ」で表示されている数値分は一度下げてみたら良いと思います。
思うにラウドネスノーマライゼーションで変わるのは「アイツの曲よりもデカイ音にしたいんだ!」という願望が、マキシマイザーで平均音量を上げることでは実現出来なくなるということなのではないでしょうか?
これはつまり、他の誰かの楽曲と「平均音量の部分」で比較しないで、自分の楽曲の持つ質感に一段とフォーカス出来るようになるということと言えます。
とっても良いことだと思いません?
マキシマイザーでバキバキにする質感だって好きならやるし、ダイナミックレンジの広い質感が好きな人は「あの音源より音が小さい」とかいうネガティブな理由から望まないリミッティングを強いられる事がなくなってくるのです。
まあゴチャゴチャ書きましたが、これからは自分にとって良い「質感」を求めることに集中していきましょう!ってことです。
ということで便利なサイトとして紹介しました「ラウドネスペナルティ」ですが、どちらかと言えばラウドネス関係の知識が乏しい依頼者に対する説得ツールとして活用できるのではないかと思いました。
マスタリングエンジニアの方が「音が小さい!」とクライアント様に言われたら、このサイトでの数値を見せれば感覚的にどういう意図があるのかを理解してもらえるかも?
「ペナルティ」というちょっと刺激的なワードをチョイスしていますが、音量が自動で下げられたとしても自信を持って聴かせられる質感を作っていきたいですね。(というか、リスナーが好きに再生音量上げられるわけで…)
デフォルトでの平均音量よりも、質感そのものにフォーカスして録音作品が作られていく時代になっていけば良いな〜っと切に思っています。
(終)