リハスタとかに併設されているリーズナブルなレコーディングスタジオ等でレコーディングをする自主制作なバンドさん達は大体ミックスダウンもその場で行うと思います。
そういう条件で出来上がって提出されるトラックは「ほぼ100%」、マキシマイザーやブリックウォールリミッターによって「音圧」が上げられた状態になっているのではないでしょうか?
家に持ち帰って既存のCD等と聴き比べた時に「音圧」で負けないようにする措置だと思いますが、そうしないと「あのレコーディングスタジオ(エンジニア)のミックスは音圧が低い」等という不当な評価を受けてしまうのですね。(ざんこくですなぁ。。)
そのままCDR焼いてデモ音源にしたい、要は「マスタリングまでやってくれ」という要望も多いでしょうし、それが形骸化して何も言わなければ「音圧」を上げた状態のトラックに仕上げるなんてこともあるのかもしれません。
しかしマスタリングまでやってもらう場合でも、そうでない場合でも必ず、マスタートラックにマキシマイザー/リミッターが「無い」状態の言わば「音圧」を上げてない状態のミックスも貰うようにしたほうが良いです。
本来マキシマイザー/リミッターが「無い」状態のトラックをマスタリング工程に送るべきなのですが、前述の理由で既にマキシマイザー/リミッターが掛けられたトラックしか持っていないバンドが多いと思うんですよね。
それの何が問題なんだ?って感じる人もいるかと思うので、以下に起きうる不都合な事象を挙げてみます。
マスタリングに提出されたトラックが既にめっちゃ音圧高い!という話も珍しくありませんが、これは結構マスタリングエンジニアを困らせています。しかも国内外問わず。
本来の順番で言えば、楽曲間の音質を調整してから最後に音量すなわち音圧の調整をするという手法が一般的なので、先に音圧が上がっているトラックだとマスタリングエンジニアは最大限のパフォーマンスが出来ないのですね。
人によってはマスタートラックのあらゆるエフェクト(EQとか)を外して欲しいというマスタリングエンジニアもいるっぽいですが、それはまあミックスダウンの音作りの範疇だと思うので個人的にはどっちでもいいと思います。
ともかくオンラインでマスタリングを承っているページには必ずといってもいいほど、提出するミックスの音圧を上げるな=マキシマイザー/リミッターを外せ、みたいなことが書かれています。
例えば最初は自分たちのデモだけの予定だったけど後に何かコンピレーションアルバムとかに参加することが決まった…という時に音圧が上がっているトラックしか持っていないとなると、ちょっともったいないです。
残念なことにインディーのバンドだと大抵すでに音圧が高くなってるトラックしか無いってケースが多い気がします。。
後々の可能性を考えると、マキシマイザー/リミッターを外したバージョンもあった方が良いはず。
音圧を上げるためにはマキシマイザー/リミッターを使ってダイナミックレンジを圧縮する必要があります。
この作業は不可逆なものなので、ダイナミックレンジを圧縮したファイル=音圧を上げたファイルから、元のダイナミクスを取り戻す事は出来ません。
今は音圧を高くしたバージョンを好んでいるかもしれませんが、数年後にもっとダイナミックレンジのある、要はマキシマイザー/リミッターによって圧縮されていない音の方が好きになったとしても、圧縮された楽曲は元に戻りません。
それに近い事は出来るかもしれませんが完全ではなく、音圧を高くした楽曲であればあるほどに難しくなります。
要は「音圧の低い楽曲」→「音圧の高い楽曲」には出来ても、「ダイナミックレンジの狭い楽曲」→「ダイナミックレンジの広い楽曲」という変換/処理は出来ないということです。
せっかく録音するなら、元のデータも手元に置いておいたほうが良いと思いませんか?
各スタジオの規約によって様々だと思いますが、レコーディングをしたデータを永久にそこで保存してくれるという事はまず無いと思われます。リハスタに併設してあるようなレコーディングスタジオの場合は特に。
そういう場合、後から「音圧を上げてないトラック」が必要だ!となったとしても、もうデータが無い!ということにもなりかねません。
そもそも「音圧を上げてないトラック」をミックスダウンの時に書き出していない場合(ミックスダウンの書き出しの時にマキシマイザー/リミッターを使っている)は、またスタジオを予約して書き出す、つまり部屋代と人件費を支払う必要があると思います。自主制作の場合はそういった余計な出費は避けたいですよね。
なので絶対にミックスダウンの際に、もらっておいたほうが無難です。
書き出し時間だって曲の長さしかかからないし、難しい要望だったり変な要望では全くありません。
そんな事は絶対無いとは思いますが、マキシマイザー/リミッターを外したミックスダウンを要望して難色を示されたら、その人の腕を疑ったほうが良いかもしれません。
生録音のバンド系であったら特に、マキシマイザー/リミッターを外して著しくクオリティが落ちるミックスはそもそもダメです。あえて過激に言うとクソです。
そんなもん外しても普通は何も問題無いはずなので、マキシマイザー/リミッターをマスタートラックに掛けなきゃ人に聴かせられないクオリティーのミックスをしている可能性も考えられます。
まあ、そんな人はいないと思いますが…一応ね。。
てことで、マキシマイザー/リミッターを外したミックスも貰っておいたほうが良いと分かってもらえたと思いますので、実際に貰う時の方法?を書いてみます。
実際のところミックスダウン時にマキシマイザー/リミッターを使っているかどうかっていうのは、その知識が無ければわからないと思うので、ミックスダウンが終わって「さあ書き出しましょう(バウンスしましょう)」という時に以下のセリフでお願いしてみましょう。
「後でマスタリングに出すかもしれないので、マキシマイザーとかリミッターを外したバージョンも貰えますか?」
多分やってもらえるはず。
書き出す際は可能であればビット深度が「32bit float/32ビット浮動小数点」で書き出してもらえたらベストです。
ただ、かなり昔のProtoolsを使っている場合は32bit Floatでは書き出せないっぽいので、その場合は24bit fixedで書き出してもらいましょう。特に言わなくてもそうなると思いますが。
ま、ミックスダウンの書き出しでの24bitと32bit floatの違いは重大な影響を及ぼさないと思うので(ウルサイ音楽は特に)、神経質になることはありません。
あと最後に覚えておいて欲しいのは、ちゃんとミックスダウンにかける時間を設けないとマキシマイザー/ブリックウォールリミッターに頼ったミックスになってしまう可能性が高いということです。
○時間パックで最後の30分とか1時間でミックスダウンをお願いすれば良いという考えは非常にもったいないですし、短時間しか与えないでクオリティについてどうこう言うのはあまりに無慈悲です。
ちょっと話がソレましたが…ともかく、何度も書きますけど…
マキシマイザー/リミッターを外したミックスも必ずもらおう!
(終)