多くのバンドが通るであろうセルフレコーディング。
デモ音源を作りたいけどレコーディングスタジオに入ったり誰かにお金を払って録音するほどでもないよな~って時にある選択肢の1つですよね。
多チャンネルのMTRがまだ高価で4trのカセットMTRで精一杯だったりした昔とは違い、DAWやオーディオインターフェイスが安価で手に入る現在ではますます有力な選択肢になっています。
でも実際にバンドのレコーディング、とりわけドラムのレコーディングを初心者がやると大抵「変な」明らかに初心者が自分で録りましたというサウンドになってしまいますよね。
そんな時に「もっと高価な機材を使わないとダメだ」的な事を考えてませんか?
「コンデンサーマイクを買わなきゃダメだ」とか、「高価なオーディオインターフェースを買わなきゃダメだ」とか…そんなことを思ってませんか?
いやいや、ちょっと待てと…
君は本当に今ある機材のポテンシャルを活用出来ているのかと問いたい!
てことで今回、自称「初心者ではない」ワタクシが定番マイクSHUREのSM58と、10年前に買ったエントリークラスのオーディオインターフェースを使ってバンドサウンドをレコーディングしてみたいと思います。
セルフレコーディングの方法を検索している初心者の皆様に、インスピレーションを与えられたら幸いです。
今回のレコーディングで使用する機材を紹介。
・SHURE SM58
ダイナミックマイクの大定番SHUREのSM58です。よく「ゴッパー」と呼ばれてるマイクで、リハスタとかライブハウスでボーカル用に使われる定番ですね。
今回レコーディングをする場所であるリハスタにて使われている使い古したSM58をレンタルして使用。グリップのコーティングが剥げまくりです笑
そして本数も「1本のみ」でレコーディングしてみたいと思います。
・M-AUDIO Fast Track Pro
オーディオインターフェースに使用するのはワタクシが10年前に初めて購入した思い出の(笑)機材であるFast Track Proです。押入れの奥で眠っていました。
マイクプリアンプとAD変換の部分を担ってもらいます。
24bitレコーディングにも対応してますが、何故か16bit設定になってたので16bitのまま録音(サンプルレートは44.1kHz)。今日び16bitでレコーディングすることなんて無いと思いますが、ローエンドな条件を想定しているので良いでしょう。
マイク入力は2つしかありませんが、今回はマイク1本でのレコーディングなので問題なし。
・Macbook Pro 2011 / Logic Pro 9
オーディオインターフェースを介してDAWを使ってレコーディングするのですが、そこで使用するのはMacbook Pro 2011に入っているLogic Pro9です。まあコレに関しては一応書いただけで何でもいいよね。
あ、一応気をつけたほうが良いこととして、録音する際に外付けセルフ電源HDDに録音することを挙げておきます。HDDの回転数は7200rpmが良いでしょう。
DAWを起動しているPCのHDDに録音するのはエラーの原因やシステムHDDの健康に良くないので避けたいところ。
こんなふざけた企画のために誰かの労力を借りるのも忍びないし、友だちもいないので、ワタクシお得意のふざけた楽曲をサクッと作り、全て自分で演奏しました。(演奏力についてはスルーして下さい…)
曲名は「SM58のうた」です笑
歌の他に、ギター、アコギ、ベース、ドラム、ピアノ、オルガンを入ったバンドアレンジ。
ベースはFast Track Proに直刺しライン入力で録音。
鍵盤はピアノを持ってないのでMIDIです。MIDIは皆使えるだろうし、えーでしょう。
てことで、ドラムから行ってみよう!
ドラム録音で大事なのはやはりチューニング含めた実際の音作り。
プロのドラムテックばりに正確にチューニングしないと絶対ダメだとは言いませんが、あまりにメチャクチャなチューニングだとミックスでどうこう出来るものにもなりません。
チューニング方法は短い文章で説明できるほど単純ではありませんし、ワタクシ自身も独学なので下手なことは言えませんが、最低限各ラグの付近を軽く指で叩いた時の音が同じになるよう均一に張れるようにしましょう。
最初は意外と均一に揃えるのだけでも難しかったりします。(聞き所が分からない)
タムはロックの場合ウラ面のレゾナンスを外してしまうのも手です。昔のロックのレコーディングでは裏面が張ってないことも多かったそうで、ピンクフロイドとかなかったらしいよ。レゾナンス面にガムテをペタペタ貼るのはヤメようッ
でも口径の大きいフロアタムはレゾナンス面無いと逆に難しいかも。
いずれも実際に叩いてみて耳で判断することを怠らないようにした方が良いですね。別に均一になってなくても叩いて良い音と感じるならそれで良し。
ロック系ならミュートも活用しても良いです。ミュートを使うことに難色を示す人も多いですが、後からエフェクターをバキバキに掛けるよりは断然良いです。
てことで、前フリが長くなりましたがドラムをチューニングしました笑
てことでチューニングも終わったし、マイクの設置「マイキング」だ!
…と言っても今回使うのはSM58「1本」だけなので、良い感じのところにポンと置けばえーんや。
とかテキトーな事を書きましたが、マイキングは非常に重要です。
個人的にレコーディングでのドラムサウンドはオーバーヘッドマイクが最も重要だと考えてます。
オーバーヘッドマイクとはちょっと高めの位置からドラム全体を録音するためのマイク。
ドラムのレコーディングといえばスネアとかタムの各楽器近くにマイクをセットするクローズドなマイキングを連想しがちですが、クローズドマイクは基本的にオーバーヘッドの補佐役と考えます。
で、今回は前述の通りSM58「1本」だけなので、この1本をオーバーヘッドマイクと見立ててみましょう。
今回マイクを設置した場所はプレイヤの頭のちょっと上でドラムよりの位置。文字通り「オーバーヘッド」ですね。
あ、SM58のグリル部分は外しました。楽器用によく使われるSM57とSM58の本体部分は同じなので、SM58のグリルを外すと57の特性に少し近づきます。(57には違うグリルがあるので同一にはならない。)
モタリまくりですが笑、こんな感じで録れます。(※ノーエフェクト)
ちょっとキックが弱いので本当だったらキックのマイクだけでも追加したいところ。ですが、今回は1本で録音することが目的なのでこれでいきます。
マイク1本だけですが位相の問題も起こりにくいのでメリットもありますね。
ドラムが無事に録れたので、次はベース!
ベースの録音は直接オーディオインターフェースに接続するライン録音にしました。
ビートルズの時代からライン入力は定番なので特に問題ないでしょう。
こんな感じに録れました。(※ノーエフェクト)
ギターやベースなどをライン録音する時はオーディオインターフェイス等にハイインピーダンス用のオプションがあるかをチェックしましょうね。Hi-Zとか書かれているボタン等があると思います。
意識が低いのでベースはレンタルのフェンダージャパンのジャズベ。シールドもレンタルのやつ。
じゃあ次にギターの録音にいきましょう。
使用アンプは定番のMarshall JCM2000。ギターはこれまたレンタルのストラト。
ギターのマイキングも奥深いけど、結構みんな上手くやれる気がします。
キャビネットのスピーカーコーンの中心に寄ると音がシャープに(細く)、外側に寄ると音が太く(ぼやける)なる傾向にあります。
あとは他の楽器にも言えますが、近接効果によりキャビネット(音源)に近づけるほどにが太く(ぼやける)、離れるほど音がシャープに(細く)なる傾向がありますね。
まあ、いい感じの位置を見つけて録ってくれや。
バッキングギターはこんな感じになりました。(※ノーエフェクト)
これもグリル外してます。
つぎにアコギの録音。使用マイクは変わらずSM58(グリルなし)。
今回はアレンジ的に取ってつけたような部分なので、あまり重要ではないです笑
アコギは買ったけど全然使ってないGibsonのJ45 Standardで、弦はもう3年くらい張り替えてない…(手渡せる方に12万で売ろうかと思ってますが、誰か買いますか?笑)
マイクの設置はリア側のボディーの鳴りを狙いました。
こんな感じに録れました。(※ノーエフェクト)
傾向としては、ネック側ほどシャープ(細く)、ホールに近づくと太く(ボヤケる)、ボディー側に行くと柔らかく(ボヤケる)という感じですかね。これも近接効果によって距離を近づけると太く(ボヤケる)、話すとシャープに(細く)なる傾向も。
アコギの録音も結構難しい気がします。(結局全部難しい笑)
個人的に出来れば2本は使いたいですね。(今回は1本だけど)
そして最後にボーカルとコーラス。
SM58は普段ボーカルによく使われているので、皆さんも使い慣れているのではないでしょうか?
録り方もクソもなくて、普通に手で持って歌いました。楽チンね笑
歌の時はSM58のグリルは付けたままにしたので、ポップガードも必要ないです。
メインボーカルは歌の下手さを誤魔化すためにダブルで録音。要は2回同じく歌ったやつを重ねます。
コーラスは高低2フレーズを2回づつ。AメロBメロで分けて録りました。
ちなみに面倒くさすぎてピッチ修正してません笑
ピアノとオルガンはMIDIキーボードを使って一応リアルタイムで演奏。(なのでズレズレ)
使用音源はオルガンがLogicに入ってるEVB3という音源で、ピアノはKONTAKTに入ってるアップライトピアノ。
つまり、高級な音源ではありません。
ま、打ち込みなので特に書くことはありませんね。
てことで、素材のレコーディングが完了!ミックスダウンに入ります。
ちなみに用意した素材以下になります。
意外と17トラックもありました笑
まず、エフェクトを一切かけずに、パンニングとボリューム調整だけでバランスを取ったラフミックスを聴いてみましょう。(※ノーエフェクト)
もう既にデモ音源っぽいレベルには達している気がします。
ここからワタクシの黒魔術(笑)を使ってミックスダウンをすると…こんな感じになります。(ラフミックスより2dBくらい音でかいです。)
どうでしょう。デモ音源だったら十分なクオリティーではありませんか?
以上、SM58「1本」だけでバンドサウンドをレコーディングしてみる実験でした!
意外となんとかなるもんですね〜
SM58はリハスタでレンタルできるし、セルフレコーディングに興味がある人ならオーディオインターフェイスくらい持っていると思うので、皆さんも是非チャレンジしてみてください。
街のレコーディングスタジオの6時間パックとかで無理にお願いするより、自分でチャレンジするのもありだと思いますよー 自分でやってみれば6時間で数曲完パケみたいな無茶な(だけどよくある)依頼も少なくなるかも?
レコーディング初心者さんは下手にマイクをたくさん使うより、少ない本数でレコーディングしてみて慣れてきたら追加する…という方法が一番成長が速いと思います。
ミックスの方法ってのはレコーディング以上に自由な世界だと思うので、各自好きにやりゃーいいです。
一応ワタクシによるミックスダウンに役に立つかもしれない記事は今のところ以下の3つです。
全てのプラグインエフェクターを使うときの心得
ミックス初心者にVUメーター導入のススメ
マルチトラックレコーディングにおける位相問題をおさらいする
もし、ミックスが上手く行かないな〜って時はワタクシに依頼してもいいのですよ?(チラッ)
ワタクシはミックスダウンの天才です(爆)
あ、今回録った素材を置いときます。(一応著作権はワタクシに属します)
パスワードは”sm58saiko“です。
SM58のうたマルチトラック(44.1kHz/16bit)
ミックスダウンしたら聴かせてね笑
(終)