ITB環境でミックス/マスタリングする時に使用するプラグインエフェクト。
技術の進歩もあってか毎日のように新製品が出てきて、それぞれの「過去最高」を更新していっていますよね。
一方で、DAWにもプラグインは標準で搭載されていたり、無料で配布しているプラグインもたくさんあります。
やっぱり有料の製品の方が性能も高いと直感的に感じてしまうので、どうしても無料のプラグインやDAW付属のプラグインだけでは良いものが出来ないと考えていまいがちだと思います(特に初心者の方は)
いいや、そんなことはない!…と言うだけは簡単なので、ここは実際に無料のプラグインだけでミックス/マスタリングしてみて公開してみよう!
と思ったのでやってみました。
使用素材
フィラデルフィアのNPO団体Wheterrane Musicが主催するShaking Throughというインディーなレコーディングスタジオでのセッションをドキュメンタリーにする企画で配布しているパラ素材を使わせて頂きます。
毎回最新エピソードのパラアウト素材が無料で配布されていまして、クレジット表記&非営利目的であればミックスをアップロードしてもOKなのです。
当サイトは一応アフィリエイトリンクの類は無い&ミックスのポートフォリオ的に使ってイイよとか書いてあるのでアリかな…と(ダメだったら消します笑)
ちなみに有料メンバーになると過去のエピソード全てのパラ素材が手に入りますよ。
その他にも基本的に寄付金で運営しているみたいなので、気に入ったら寄付してあげてください。
それでは、最新のエピソードを聴いてみましょう。
香港のDavid Boringというオルタナティブロックなバンドです。
調べてみると過去に日本ツアーにも訪れていることもあるそう。
今作は過去に同タイトルの曲もあるシリーズの3部目で、虚無的なテーマの楽曲のようです。なかなかダークでシリアスな印象の楽曲。
ここのところ香港では大規模なデモが行われていますが、そういう事柄が楽曲にも反映しているのかもしれません。
激しさを増しているみたいなので、彼らも大丈夫なのか心配ですね。
DAWと使用プラグイン
ミックスを行うDAWは私が去年からメインで使い始めているREAPERです。
ちなみにREAPERは無料ではありません。
今回はREAPER付属のプラグインと無料プラグインのみでミックス。
以下が使用プラグインリストです。
書き出してみると、意外と多くのプラグインを使ってるんだなー
完成物
とりあえず完成した音源を聴いてみましょう。
こんな感じで悪くない出来じゃないですかね?
高級なプラグインエフェクトを使わなくても、ちゃんと聴けるミックスは作れるのですね。
一応ミックスの流れ
これで終わったら味気ないので、一応どのようにミックスしていったのか簡単に書いていきます。
人のミックスやり方ってあまり参考にならないと思いますが笑
まず、はじめにトラックを並べてボリュームとパンニングのみでバランスを取っていきました。
同時にドラムやステレオトラック、複数トラックになっている単一楽器などをバスなどにまとめて整理していきます。
それからAirwindowsのPurestConsoleを使うためにルーティングをしていきます。
また、主に各トラックの位相をチェック。(主にドラム)
極性反転ボタンをポチポチしたり、オールパスフィルターを使ってみたり。
あらかた位相のチェックが終わったらバランスを取っていきます。
録音の時点で積極的に音作りをしていて、ルームアンビエンスやエフェクト類もすでに揃っているので基本はバランスをとる作業ですね。
しかし、王道なアレンジの楽曲ではないのでバランスを取るのも一筋縄ではいかない感じ。
特に最初のフェイザーみたいなドラムが無くなるところ(2:00辺り)をどうすんだ?って感じでしたが、ここは最終的にルームアンビエンスのブレンドをオートメーションでコントロールしてバランスを取ってみた。(もう一工夫欲しかったかもなー)
なんとなくバランスが取れて完成形がイメージできたらエフェクトを使ってシェイプアップしていきます。
キックのアウトとスネアはゲートを使って分離感をよくしました。ドラムのルームアンビエンスを大きめにした方がしっくりしたので個別マイクはなるだけアタックにフォーカスしたかったのです。
とはいえタムは案外ゲートしてない。(録りで若干してるっぽい?)
キックはちょっとぼやけた音に感じたので、インの方にコンプ(Airwindows Pressure4)、アウトの方にトランジェントシェイパー(Airwindows Point)を使って締めました。
スネアはティルトEQのみで、タムはReaEQのみ。
スネアにはリバーブを使ってますが、これは終盤になってもう少しスネアの存在感が欲しくなったために決めました。リバーブの後段にコンプで叩いて密度を上げてます。
3本あるオーバーヘッドマイクはノーエフェクト。
ドラムのバスにはAirwindowsのLogical4というSSLモチーフのバスコンプを使い、ティルトEQとReaperのEQで音作り。
ルームアンビエンスはLRの位相関係が好みでなかったので、オールパスフィルターを使ってステレオイメージを変更しつつ、EQでアンビエンスを強調するように調整。
更にDMG AudioのTrackControlのDelayでドラム本体との関係性を調整。ほんの少し後ろにずらしました。
序盤に存在感を放つエフェクトのかかったドラムトラックはフェイザーっぽい質感がありつつも、そこまで強くなくて微妙に取り扱いに困りました。
そこで、LRの広がりをやはりオールパスフィルターを使って調整、EQで音を作ったのちにPingPongDelayを使って左右に揺らすことでドラム本体とブレンドした時のフェイザー感を強くする演出を狙ってみました。
ついでにAirwindowsのLoudという空気粒子の非線形性をモデリングした?Loudという歪みを少し使ってみました。
それから終盤に出てくるパーカッシブなスティック?のトラックが何故かM/Sトラックでステレオ3tr分あったので、GoodhertzのM/S Matrixでデコードしてバスにまとめてハイパスフィルターだけかけました。
オリジナルのミックスを聴いてもほとんど聴こえない(使ってない?)のですが笑
ベースはラインとアンプのトラックがありましたが、これも位相関係が怪しいと感じたのでラインの極性を反転+オールパスフィルターで調整。
ラインがすっごいパサパサしてたので、AirwindowsのBassDriveを使って歪ませました。
とはいえラインの信号はかなり低めにしたのでどちらもあんまり効果はなかった気がする。
それからバスでまとめて軽くEQのちにAirwindows Driveで文字通りドライブさせて完了。
ギターのトラックは基本ルームマイクの比率を高めに真ん中に置いて、その他のマイクのみパンニングを施しました。
あとはEQで軽く調整。左側のギターだけ耳に痛いところが多めだったので、そこを抑えましたが、基本は低音をテキトーに抑えるだけのEQ。
終盤に出てくる3tr分のビブラフォンはそれぞれモノラルだったのですが単純なPANで位置を決めてもしっくり来なかったのでPingPongPanを使ってそれぞれ違うタイミングで揺らして怪しげな雰囲気を出してみました。
あんまし主張する要素でなさそうなのでそこから更にMidの音量だけ下げてS成分の比率を上げました。
前半のボーカルは電話を使って録音したトラックとエフェクトのトラックがありました。
エフェクトの方のトラックは音量を上げつつ後ろの方にいて欲しかったので、バンドパス+ノッチフィルターで調整。
電話のボーカルは低音のハムノイズっぽいが必要ないと思ったのでハイパス+ちょっと耳に痛い部分を抑えました。
間のウィスパーボイスは遠くからの囁きっぽい演出をしてみようと思ったので、バンドパス+リバーブ。
リバーブはConvology XTというコンボリュージョンリバーブからテキトーなプログラムをチョイス。
叫び声は特にEQなどせずにリバーブのみ。
リバーブはこれまたConvology XTからテキトーに選んで、それだけだとつまらなかったので直列でAirwindowsのMVというリバーブも使いました。ディケイがすごく長めな感じ。
後半の女性ボーカルはEQでちょっと低音を削っただけで、男性ボーカルはKlanghelmのDC1Aというコンプで少し圧縮してます。
共にリバーブ(またConvology XT)を使ってます。
終盤のコーラスはリバーブのトラックみたいのをTrackControlで少しディレイさせて、ドライのトラックとバスにまとめてEQしておしまい。
あ、割と最初の方でマスターバスにSlickEQを使って音作りしてました。
毎回やるわけでないけど、マスターバスでがっつりまとめて音作りをしちゃうのも有りですね。時短にもなるし。
あとマスターバスにはモニター用のディザーとしてAriwindowsのNotJustAnotherDitherを使ってます(StudioTan内蔵の方)
ミックスはこんな感じでした。
あんまし工夫はせずに素直にバランスを取った感じです。
そして出来たミックスがこれ
マスタリングっぽいやつ
一応マスタリングっぽいこともしてみました。
まず最初にマキシマイザーにぶっ込みます笑
使ったのはAirwindowsのNC-17。
一応オリジナルのバージョンを聴いてみようと思って比較してみたら、オリジナルのよりも大分ダークよりな印象だったので前段にEQを挿してちょっと明るくしました。(そのままでも良かったけど一応少し近づけたほうがいいかなと笑)
使ったのはTilt EQとReq EQです。
あとはマキシマイザーの前段にクリッパー/サチュレーターとしてAirwindows Spiral 2を入れて若干密度を上げてみました。
DitherはAirwindows StudioTanに入っているNotJustAnotherDither
NC-17がCeiling-0.5dBFS固定なのでディザー前にPurestConsoleで若干下げました。
以上で終了!
一応ミックスと同じ音量にゲインマッチングさせたバージョンはこれ
無料のプラグインだけでもいける
という感じで無料で手に入るプラグインだけでミックスとかして見ました。
当たり前ですが、普通にミックスは出来ます。
だからプラグインなんか買う必要無いのだ!っていう結論には…もちろんなりませんけど笑
新しいものはいつだって楽しいし、奇想天外な音作りのバリエーションが増えるしね。
でも、ミックスのクオリティーに直接的に影響するのは作業をする人、決定を下す人のセンスだと思うので、高級なプラグインを買ったところでクオリティーが即アップするわけない…って、よく言われてるので百も承知ですか笑
まあ最低限のモニター環境は必要だと思いますけど、それも聴く能力が皆無の場合は無力化してしまうので、やっぱりセンスを磨いていった方がイイと思います。
どうやってセンスを磨くのかは分かりませんが…妄想力と想像力とかが重要なのではないかと思います(テキトー)
えっ?筆者がセンスがあるように思えない?
そ…それはあなたの主観だから…(プルプル)
(終)